ローマ時代のカルタゴ遺跡から出土した浅浮き彫りに想を得て制作された聖母子像ノートル=ダム・ド・カルタジュ(カルタゴの聖母)のメダイ。
表(おもて)面はノートル=ダム・ド・カルタジュを浮き彫りにしています。この聖母子像は幼子イエスが聖母の左ひざではなく右ひざに乗る珍しい構図で、オリジナルの浅浮き彫りに刻まれていたと思われる三人のマギから礼拝を受けています。幼子イエスは左手にクロブス・クルーキゲル(世界球)を持ち、右手で天を指さして、自らが神なるキリストであることを宣言しています。聖母子の姿勢と長椅子は、いかにも古典古代の彫刻を思わせます。
聖母に執り成しを求める祈りが、聖母子を取り巻くようにフランス語で記されています。
Notre-Dame de Carthage, priez pour nous. カルタゴの聖母よ、われらのために祈りたまえ。
幼子イエスが手に持つ世界球において、被造的世界は球形によって象徴されています。その一方で本品全体の形状である八角形も、球や円と同様に、被造的世界を象徴します。それゆえ世界球を持つ聖母子像と八角形を組み合わせた本品は、聖母子による救い、神の平和が、北アフリカをはじめとする全世界に広まることを願う意匠となっています。
裏面には南西方向から見た旧カルタゴ司教座聖堂サン=ルイが精緻な浮き彫りによって表現され、「カルタゴ巡礼記念」(Souvenir de Carthage)という言葉が添えられています。チュニジア独立に伴って、司教座聖堂はその役割を失い、ノートル=ダム・ド・カルタジュもチュニス司教座聖堂に移されましたが、このメダイが鋳造されたのはカルタゴ司教座聖堂が完成して間もない頃で、ノートル=ダム・ド・カルタジュの像も、聖王ルイの聖遺物も、この聖堂に安置されていました。
本品はおよそ八十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品で、突出部分に磨滅が認められます。両面を覆うパティナ(古色)は、真正のアンティーク品の証です。