フランスの守護聖女、リジューの聖テレーズ(幼きイエズスの聖テレジア)のメダイ。立体的な人像を模(かたど)った珍しいタイプです。テレーズが聖人に列せられたのは 1920年のことですが、本品は列聖直後にフランスで制作されたものです。
テレーズはカルメル会の修道女の服装、すなわち茶色の修道衣、薄茶色のマント、白のウィンプル、黒の頭巾を身に着けています。
テレーズは列聖されて二年後の 1922年、教皇ピウス11世によってフランスの守護聖人 (une patronne secondaire) とされました。それゆえテレーズはフランスにおいて諸聖人のなかでもとりわけ人気があり、メダイも数多く作られていますが、本品のような人像型は珍しく、私自身初めて目にしました。本品は立体的な作りであるゆえに、光が当たる方向によってメダイの表情がさまざまに変化します。
あたかもこの場にいるかのように立体的な像で表されたテレーズは、薔薇が咲きこぼれるクルシフィクスを胸に抱いて、眼差しを真っ直ぐに神へと向けています。薔薇は愛の象徴であり、クルシフィクスを包むようにテレーズの胸に咲きこぼれる薔薇は、キリストと神にすべてを捧げる愛を表しています。
裏面は聖女に執り成しを求める祈りの言葉がラテン語で記されています。
SANCTA TERESIS A JESU INFANTE, ORA PRO NOBIS. 幼きイエズスの聖テレジアよ、われらのために祈りたまえ。
祈りの言葉の下に、ごく小さな文字で「フランス」(FRANCE) と刻まれています。
本品はおよそ 90年前に制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらずたいへん良好な保存状態です。このように立体的な作りの品物は大きく磨滅している場合が多いですが、本品はとても大切にされてきたものらしく、突出部分の磨滅もごく軽度です。大きな写真は実物を80倍の面積に拡大しているので磨滅した個所が判別可能ですが、肉眼で実物を見ると新品同様の美しい状態です。