ロベール・クートル作 「サタンを倒す聖ミカエル」 精緻な浮き彫りによるモン=サン=ミシェル修道院 神に従う大天使の銀無垢メダイ 直径 18.3
mm
突出部分を除く直径 18.3 mm
フランス 二十世紀中頃
いまから数十年前のフランスで制作された
大天使ミカエルのメダイ。剣を振り上げてサタンに止めを刺そうとするミカエルを浮き彫りにし、宝石のカットを思わせるファセット付の枠で取り囲んでいます。
悪魔サタンは本来「ルキフェル」あるいは「ルシフェル」(羅 LUCIFER 光り有る者)という名前の優れた天使でしたが、神に逆らい、善性を欠く存在となってしまいました。本品に彫られたサタンは天使の翼を持ちつつ、角と鉤爪を伸ばした邪悪な姿で表されています。
大天使がサタンを踏みつけるさまは、
無原罪の御宿りが蛇を踏みつけるさまを連想させます。無原罪の御宿りは
「新しきエヴァ」(羅 NOVA EVA)であって、蛇が象(かたど)る罪の支配を受けません。それと同様にミカエルも悪の支配を受けることがありません。
本品に彫られたミカエルは鎧(よろい)をまとい、剣と盾で武装しています。これに対してサタンは丸腰で、自分の角や牙、鉤爪を頼りに戦いを挑み、あえなく大天使に制圧されています。大天使の武具は神の意志の象徴であり、大天使がそれらを身に着けて戦う姿は、この天使が自分の意志に従うのではなく神の意志にのみ従うことを選び、神の僕(しもべ)となって勝利する軍人であることを示します。
大天使は神の意志に逆らうことが無いゆえに、へブル語で「神の如き者」を意味する「ミカエル」という名前を持っています。へブル語「ミカエル」は、ラテン語では「クイス・ウト・デウス」(羅
QUIS UT DEUS)と訳されています。「クイス」(QUIS)は「誰か?」を表す男性単数主格形の疑問代名詞、あるいは「或る者」を表す男性単数主格形の不定代名詞です。「ウト」(UT)は「あたかも…のように」を表す接続詞です。「デウス」(DEUS)は「神」の男性単数主格形で、「神が」という意味です。したがって「クイス・ウト・デウス」は「神が為し給うように為すのは誰か?」(QUIS
FACIT UT DEUS FACIAT ?)、あるいは「神が為し給うように為す者」(ALIQUIS QUI FACIT UT DEUS FACIAT)という意味です。
ミカエルはサタンの頭部を見据えて大きな剣を振りかざし、狙いを定めて最後の一撃を加えようとしています。浮き彫りの周囲にはフランス語で「サン・ミシェル・アルカンジュ」(仏
Saint Michel Archange 大天使ミカエル)と記されています。
ミカエルの右側(向かって左側)、「サン・ミシェル」の文字のすぐ下に、フランスの高名なグラヴール(仏 graveur メダイユ彫刻家)であるロベール・クートル(Robert Coutre, 1915 - ?)の署名が彫られています。
ロベール・クートルはパリの国立高等美術学校(l'École nationale supérieure des beaux-arts de Paris,
ENSBA)の卒業生であり、
アンリ・ドロプシ(Henri Dropsy, 1885 - 1969)、ロベール・ヴレリク(Robert Wlérick, 1882 - 1944)、アンリ・ブシャール(Henri Bouchard, 1875
- 1960)に師事しました。ローマ賞二等 (Premier Second Prix)及びサロン展の最高賞(Médaille d'honneur)を受賞しています。
本品の裏面にはノルマンディーにある
モン=サン=ミシェル修道院の全景が浮き彫りにされています。浮き彫りの下部には「フランス、モン=サン=ミシェル」(Mont St. Michel, France)の文字が刻まれています。
本品の直径は十八ミリメートル強で、修道院を彫った部分の直径は十四ミリメートルほどしかありません。それにもかかわらず修道院はひとつひとつの建物が忠実に再現され、あたかもサン=マロ湾の対岸に立って現実の風景を見ているような錯覚さえ覚えます。僅かな厚みの差によって実現された見事な遠近法は、潮の香りと風さえ感じさせます。
銀はフランス製信心具に使われる最も高級な素材ですが、高価であるゆえに、通常はブロンズに施すめっきとして使われます。しかるに本品は銀無垢製品で、銀をめっきするのではなく、銀そのもので製作されています。上部に突出した環の表(おもて)面に二箇所の刻印が見られます。そのうちのひとつは銀細工工房の刻印、もう一つはパリ造幣局が貴金属の純度を保証する検質印です。
本品は環の幅が狭いために刻印の意匠が分かりにくいですが、純度の刻印は蟹を模っています。蟹の刻印はイノシシの頭の刻印と同様に、フランスにおいて純度八百パーミル(八十パーセント)の銀を示します。
本品は数十年前のフランスで制作された古い品物ですが、保存状態は良好で、特筆すべき問題は何もありません。銀の硫化による黒ずみは「古色」と呼ばれ、アンティーク品にふさわしい落ち着いた風合いです。銀色に輝く方がお好みの場合、練り歯磨きを付けて歯ブラシで軽くこすれば、誰でも簡単にクリーニングできます。
本体価格 11,800円 販売終了 SOLD
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。
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