独創的デザインによる聖ベネディクトゥスのメダイ。署名はありませんが、20世紀フランスの彫刻家、ドニ・フェルナン・ピィ (Denis Fernand Py, 1887 - 1949)
の作品で、ピィの没後、フランスのメダイ工房 JBで鋳造され、南仏タラスコン(Tarascon プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏ブーシュ=ド=ローヌ県)近郊にあるサン=ミシェル・ド・フリゴレ修道院
(L’abbaye Saint-Michel de Frigolet) で販売されたものです。
本品は 1880年以来モンテ・カッシーノで鋳造されているメダイの伝統的イコノロジーに則りながらも、いかにも前衛的な作風で知られるピィの作品にふさわしく、時代を先取りしたミニマリスティックなデザインを採用しています。大胆なマッス(masse 塊)による特徴的な表現は、大きなサイズと相俟って、見る者の心を強く惹きつける存在感をこのメダイに与えています。
1920年代のピィは、伝統的宗教美術に抵抗する美術家集団、「アルシュ」(l'Arche) に加わっていました。図像学上の伝統に縛られないピィの作風は、当初は教会関係者に認められませんでしたが、1930年代には聖俗いずれの分野においてもその才能を認められ、教会の仕事にも関わるようになりました。現在、ピィの作品はヴァティカン美術館にも収蔵されています。
本品のコンディションはきわめて良好で、細部に至るまで、鋳造当時のままの状態で保存されています。真正のヴィンテージ品ならではのパティナ(古色)が、現代のものとは一線を画した趣(おもむき)を醸(かも)しています。