よき勧めの聖母と守護天使 神の加護を願う大型プラケット 立体的な彫刻による美麗な作例 34.4 x 23.2 mm


突出部分を除くサイズ 縦 34.4 x 横 23.2 mm  最大の厚さ 4.0 mm  重量 14.7 g

フランス  1920 - 30年代



 「聖母子と天使による加護」をテーマに、80年ないし90年前のフランスで制作された美麗なプラケット(四角いメダイ)。一方の面には「よき勧めの聖母」を、もう一方の面には「守護の天使」を、それぞれ立体的な浮き彫りで表しています。上部の突出を除く長方形部分の縦 34.4ミリメートル、横 23.2ミリメートル、最大の厚さ 4.0ミリメートルという大きなサイズの作例で、14.7グラムの重量は五百円硬貨二枚分強に相当します。





 よき勧めの聖母はローマの中心部からおよそ40キロメートル東、ジェナッツァーノ(Genazzano ラツィオ州ローマ県)にある聖画像です。聖母子は共に大きな冠を戴き、天上の栄光に包まれています。聖母は幼子イエズスを左腕に抱いていますが、これは聖母が天国においてイエスの右(すなわち、向かって左)に座することを表します。幼子イエスが両腕で母の首元を抱き、母子が顔を寄せて睦み合うさまは、普通の親子と変わらない愛情の通い合いを描いて、見る者に親しみと共感を覚えさせます。


 ジェナッツァーノの聖堂に安置されている「よき勧めの聖母」


 ジェナッツァーノの聖堂にある「よき勧めの聖母」の実物は、壁から剥離した二次元のフレスコ画です。しかしながら本品は立体的な浮き彫りにより、二次元の聖母子像に三次元性を与え、あたかも生身の聖母子を眼前に見るかのような臨場感を以て再現しています。すなわち本品はジェナッツァーノの聖母子像の単なる複写ではなく、メダイユ彫刻というメディウム(媒体)によって、「よき勧めの聖母」に新たな生命を吹き込んだ芸術品であるといえます。





 本品の浮き彫りに見られる特徴としては、聖母の表情が非常に静かで、憂いを含んでいるかのようにさえ見えることです。ジェナッツァーノの聖堂に安置されている実物の聖画においても、聖母は幼子イエスほど目を大きく見開いておらず、その表情は穏やかですが、本品に彫られた聖母の表情は、豪華な冠を被った栄光の女王であるにもかかわらず、悲しみか心配事を秘めているかのように、筆者(広川)には見えます。この雰囲気は幼子イエスにも伝わっています。ジェナッツァーノの聖画では、イエスは安心し切った様子で大きな目を見開き、母の衣の首元を掴みつつ、天上あるいは父なる神に目を向けています。しかしながら本品においては母の胸元に優しく手を添えて、憂うる母に寄り添い、頬を寄せて伝わる体温と愛情で慰めようとしているかのように見えます。




(上) 「よき勧めの聖母」の小聖画。いずれも19世紀中頃から20世紀前半のフランス製。


 「よき勧めの聖母」の絵姿はメダイや小聖画となって流布していますが、冠の有無や母子の視線の向き、幼子の手の添え方など、細かい部分の描写は作者によって異なります。母が幼子を愛し守るだけでなく、幼子もまた母を愛し守ろうとしているかのように見える本品の彫刻は、聖母子に通い合う愛をいっそう強く感じさせ、キリストの聖心マリアの聖心を並置した図像を思い起こさせます。


(下) 「不思議のメダイ」に並置されたキリストの聖心とマリアの聖心。メダイのサイズ 37.5 x 28.3 mm 縁の厚さ 2.2 mm 重量 9.5 g フランス 19世紀 当店の商品




 「よき勧めの聖母」の浮き彫りは、艶消し仕上げの表面が光を柔らかく反射して、あたかも聖母子が愛の微光に包まれているかのように見えます。写真では分かりませんが、聖母子の浮き彫りは立体的で、きめ細かな肌や柔らかな髪、衣の自然な流れなど、非常に優れたできばえです。ジェナッツァーノの聖堂に安置されている原画では、聖母子の後光ははっきりと描かれていますが、本品の後光は背景に消え入るように淡く彫られています。本品の浮き彫り彫刻は信心具でありながら美術工芸の水準に到達しており、プラケット(メダイ)の大きなサイズと相俟って、生身の聖母子を眼前に見るかのような錯覚をも覚えさせます。


 聖母子の下にはラテン語で「マーテル・デー・ボノー・コーンシリオー」(MATER DE BONO CONSILIO よき勧めの聖母)と書かれています。「マーテル・デー・ボノー・コーンシリオー」(MATER DE BONO CONSILIO) と「マーテル・ボニー・コーンシリイー」(MATER BONI CONSILII) は同じ意味で、どちらでも構いません。英語で言えば所有格を使うか、"of"に導かれる句を使うかという言い方の違いであって、どちらも正しいラテン語です。





 メダイのもう一方の面には幼い子供と守護天使の姿を浮き彫りにしています。守護天使は力強い長身を屈めて子供の前に跪き、子供の腕に優しく手を添えて、祈りへと導いています。子供は目を閉じ、胸の前に手を合わせて、願いと感謝を神に捧げています。執り成しを願うラテン語の祈りが、子供と天使の足下に刻まれています。

  ANGELE DEI, ORA PRO NOBIS.  神の御使いよ、我らのために祈りたまえ。

 守護天使は神の軍人であり、地上のすべての軍隊を一撃で殲滅する最強の存在ですが、いまは母のように優しい横顔を見せて子供を見守っています。子供の顔と手足は可愛らしい丸みを帯びて、幼さと寄る辺の無さが強調されています。ふっくらと柔らかい子供の足は履物を履いておらず、「詩篇」91篇 11節から13節の聖句を思い起こさせます。該当箇所を新共同訳により引用します。

Angelis suis mandavit de te, ut custodiant te in omnibus viis tuis; in manibus portabunt te, ne unquam offendas ad lapidem pedem tuum. Super aspidem et basiliscum ambulabis, et conculcabis leonem et draconem.   主はあなたのために、御使いに命じて、あなたの道のどこにおいても守らせてくださる。彼らはあなたをその手にのせて運び、足が石に当たらないように守る。あなたは獅子と毒蛇を踏みにじり、獅子の子と大蛇を踏んで行く。(新共同訳) 


 子供と守護天使を覆うアーチは、天使の翼と後光に沿って曲線を描き、画面を引き締めています。アーチの左右に浮き彫りにされた百合は、摂理を信じて神に身を委ねる信仰を象徴します。





 この面の浮き彫り彫刻も、「よき勧めの聖母」を刻んだ面と同様に優れています。子供と天使の表情、肌や髪の質感から、子供の帯や天使の袖など細部まで表現した衣の描写、自然に流れる衣の襞、天使の翼の質感、写実的な百合の描写に至るまで、すべての部分が完璧な出来栄えです。子供と天使の足下には傾斜が付けられて、地面の奥行きを表しています。





 本品は数十年前のフランスで制作された真正のヴィンテージ品ですが、鋳造当時と変わらない良好な保存状態です。拡大写真ではめっきの剥落箇所がよくわかりますが、肉眼で実物を見ると十分に美しく感じます。古い年代のものであり、またいずれの面もたいへん立体的に制作されているにもかかわらず、突出部分に磨滅は認められません。

 丸みを帯びた仕上げは神と聖母の愛のメダイにふさわしく、手に取って見つめていると優しい気持ちになります。写真ではあまり美しく見えませんが、ご購入いただいた方には必ずご満足いただけます。





本体価格 34,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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