幾何学的な直線でシルエットを構成したアール・デコ全盛期のセンター・メダル。ブロンズに銀めっきをほどこしたもので、盾形に似た八角形のメダイユに、六角形の環を三つ取り付けています。キリスト教において、「八」は新生、生まれ変わりの象徴であり、また「山上の垂訓」(マタイによる福音書
5: 3 - 12)に説かれた八つの幸福を表します。
表(おもて)面にはアール・デコ様式の枠に囲まれて、聖母マリアの横顔が浮き彫りにされています。美しく整った顔立ちの若きマリアは、つつしみ深くヴェールを被っていますが、顔を挙げてまっすぐに前を見つめる様子は堂々としています。マリアのしっかりとした態度は、受胎告知の際、天使ガブリエルに対して「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身になりますように。」(「ルカ」 1:38)と答えた信仰、神への完全な信頼を象徴しています。
マリアの背景となっている十字架には、マリアの象徴である薔薇が浮き彫りにされています。十字架に薔薇をあしらったデザインは、イエズス・キリストの受難において聖母もイエズスと共に苦しみを味わい、いわば共に十字架に架かったことを表します。盛期アール・デコのメダイらしく、薔薇も図案化されていますが、アール・デコのデザインが時折見せる冷たさは、ここにはありません。聖母像は女性らしい優しさに、十字架上の薔薇は神とイエズスを愛する愛にあふれています。聖母の後光は直径8ミリメートルで、まるでマリゴールドの花のような愛らしい装飾パターンが取り入れられています。
メダイの下部には製造国を表す「フランス」(FRANCE) の文字が記されています。また聖母の首の後ろ辺りにメダイユ工房の刻印 (AP) があります。
メダイの裏面には聖心を示すイエズス・キリストが浮き彫りにされています。イエズスは左手で聖心を示し、右手で祝福の姿勢を取っています。イエズスの両手には釘の孔が開いているのが見えます。
こちらは裏面と言っても、基督の浮き彫りの立体感と丁寧な仕上げは、表(おもて)面の聖母像に引けを取りません。メダイの向かって右に、製造国を表す「フランス」(FRANCE)
の文字が記されています。
本品は制作からおよそ80年ないし90年が経っていますが、使用されずに新品のまま残されていたため、細部に至るまで完全な保存状態です。真正のアンティーク品であると同時に、稀少なデッドストック品です。ロザリオのパーツとして使う以外にも、単独で、あるいは他のパーツと組み合わせて、美しいペンダントを作ることができます。参考画像は、こちらをご覧くださいませ。