オリア製金張りメダイユのネックレス 《アドルフ・リヴェ作 受胎告知の聖母 直径 23.2 mm》 オールド・プラスチックと木製ビーズ、地中海サンゴ、金張りビーズによる作例 全長
48 cm フランス 1920 - 30年代
突出部分を含む縦横のサイズ 29.5 x 21.8 mm 最大の厚さ 6.8 mm
金属と有機物の対比が美しい聖母のネックレス。およそ九十年前のフランスで制作された品物です。ペンダントのメダイユは、高名な彫刻家による稀少な作品です。
ネックレスの珠は四つの素材、すなわち金属製ビーズ、木製の小円盤型ビーズ、サンゴのビーズ、オールド・プラスティクス製ビーズでできています
金属製ビーズは円柱状のものと細長いもの、小さな十二面体のものが使用されています。金属製ビーズに破損や錆などの問題は無く、いずれも良好な状態です。木製ビーズは低い円柱状です。ニスは塗られていませんが、ひとつひとつが丁寧に研磨され、穏やかな艶を帯びています。サンゴはやや扁平な球形で、ルーペで拡大すると真正のサンゴ特有のテクスチャが観察できます。色から判断して、本品に使われているのは地中海産サンゴでしょう。オールド・プラスティクスのビーズはおそらくセルロイド製です。木の実のような形状は型で成形したものではなく、ひとつひとつ手作業で彫られています。
ペンダントのメダイユは、典雅な作風で知られるフランスのメダユール(仏 un médailleur メダイユ彫刻家)、アドルフ・リヴェの手によります。
アドルフ・リヴェ(Adolphe Rivet, 1855 - 1937)はパリの国立美術専門学校(l'École nationale et spéciale des Beaux-Arts 現在の高等美術学校)でジュール・カヴリエ(Jules
Cavelier, 1814 - 1894)、ユベール・ポンカルム(Hubert Ponscarme, 1827 - 1903)、オスカル・ロティ(Oscar Roty, 1846 - 1911)の教えを受けました。フランス芸術家サロン(Le Salon des artistes français)にもたびたび出品し、1888年に奨励賞(une
mention honorable)、1908年に第二級メダイユ(une médaille de deuxième classe)を獲得しました。
アドルフ・リヴェは丸彫り彫刻、浮き彫り彫刻、メダイユ彫刻のほか、実用性のあるボンボニエール(菓子入れ)なども制作しています。メダイユ彫刻に関しては、アール・ヌーヴォー様式に基づ典雅な美を特徴とします。アドルフ・リヴェのメダイユは大きなサイズの作品が多数知られていますが、信心具のメダイユ(いわゆるメダイ)はたいへん珍しく、筆者(広川)は本品以外の作例を知りません。
アドルフ・リヴェは、髪をヴェールに包んだ若きマリアを浮き彫りにしています。マリアの髪を被うヴェールは服喪を表す場合もありますが、風に靡く本品のヴェールは軽やかで、薄絹でできた花嫁のヴェールであることが分かります。アドルフ・リヴェが本品メダイユに浮き彫りにしたのは、神の花嫁に選ばれた受胎告知の聖母に他なりません。
天使が家の中に入って来て、メシアの受胎を告知するという異常な出来事にも関わらず、少女マリアは全く動じることなく「お言葉通り、この身に成りますように」と答えて、神が人に差し出し給うた愛と救いを受け容れました。前方を真っ直ぐに見つめるマリアの眼差しは、アブラハムやヨブにも勝る堅固な信仰を可視化しています。
メダイユの裏面には、香しい百合が浮き彫りにされています。百合が性的純潔の象徴であることはよく知られていますが、それ以外にも百合は神による選びの象徴、ならびに神の摂理に対する信頼の象徴でもあります。それゆえ百合は神に選ばれ、救いを受け容れたおとめマリアを卓越的に象徴する花とされています。
本品において、百合は三輪の花を咲かせています。三輪の百合は三位一体の象りでもあり、キリスト教の枢要徳である信仰と希望と愛の象徴でもあります。
メダイ上部の環を通る吊り輪に、オリアの刻印があります。
オリア(Oria)は 1897年に設立されたジュエリー・ブランドです。フランソワ=オーギュスト・サヴァール(François-Auguste
Savard, 1803 - 1875)のフィクス(Fix)、シャルル・ミュラ(Charles Murat, 1818 - 1897)が 1847年に設立したミュラ(Murat)に比べると、オリアは後発ブランドです。しかしながらオリアのジュエリーの品質はフィクス、ミュラに比べて引けを取らず、1924年のナント博覧会で金メダル、1929年のバルセロナ博覧会で金メダル、1930年のアントワープ博覧会でも特別賞、1931年のパリ博覧会で大賞を獲得しています。
上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。
本品ネックレスは 1920年代ないし 1930年代に制作されたものですが、当時のビーズとメダイをそのまま使いつつ、糸を丈夫なワイアに置き換えています。そのため糸が切れる心配はなく、日々安心してご愛用いただけます。
本品のペンダントとなっているメダイユには、野の花のように純朴な少女の類稀(たぐいまれ)な信仰が、優れた芸術家の技量によって見事に可視化されています。ネックレス部分には木とサンゴ、植物性プラスティクスが使われ、純朴で清らかな少女の信仰とよく調和しています。アドルフ・リヴェの手によるメダイは非常に珍しく、筆者は本品以外の作例を知りません。
本体価格 35,800円
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。
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