未販売のヴィンテージ品 トリスケルが並ぶクロワ・ブルトンヌ 《愛の赤のブルターニュ十字 46.3 x 20.0 mm》 鋳造による重厚な作例 フランス 1960年代


突出部分を含むサイズ 縦 46.3 x 横 20.0 mm



 六角形のフランス本土の北西端からは、ブルターニュ半島が大西洋に突き出しています。ブルターニュ半島を中心に、ヴァンデ地方、ノルマンディー地方を含む北フランスを、古くはアルモリカ(羅 ARMORICA)と呼びました。大陸におけるケルト文明とケルト語は、最後にアルモリカに残存しました。これ以外にケルト語が残存した地域は、島嶼を中心とするスコットランド北西部、アイルランド、マン島、ウェールズ、コーンウォールです。

 本品はブルターニュをはじめとするケルト文化圏の十字架で、フランスではクロワ・ブルトンヌ(仏 une croix bretonne ブルターニュ十字)と呼ばれています。本品をはじめとするクロワ・ブルトンヌには、他地域のケルト十字と共通する次のような特徴があります。

・交差部の直近において、縦木と横木が細くなっていること。

・交差部を中心とする円環が、縦木と横木を繋いでいること。

・縦木、横木のそれぞれが幾つかの領域あるいは画面に区切られ、曲線的装飾図形が並んでいること。

・組紐文が取り入れられていること。





 ケルト十字は上記の諸点が共通しているとはいえ、すべてが同じ意匠というわけではありません。本品は縦木の下半分に三つのトリスケルを積み重ね、その上にギリシア十字様(よう)の十字架を置いています。キリシア十字は末端に向かって曲線的に開大し、交差部の覆輪状台座にはラウンド・シングル・カットの赤いストラス(ラインストーン)が取り付けられています。

 キリスト教の伝統的象徴体系において、赤は愛を象徴します。本品のギリシア十字は舘木と横木に線状の文様が刻まれ、交差部の赤色から愛の恩寵が発出するように見えます。





 ケルトの装飾の特徴は、円や渦巻き、組紐文による曲線的意匠です。この特徴は紀元一世紀に明瞭に現れ、同時代のグレコ・ロマン式装飾に見られる簡素な厳格さと鮮烈な対照を為しました。本品の基部に並ぶ三枝の渦巻状図形はトリスケル(ブルターニュ語 triskel フランス語 triskèle)と呼ばれるケルトの装飾意匠です。


 ギリシア語で「三」をトレイス(希 τρεῖς, οἱ, αἱ)、トリア(希 τρία, τά)といい、その語幹トリ(τρι-)は「三」を表す接頭辞として使われます。一方ギリシア語で「脚」をスケロス(希 σκέλος, εος, τό)といいます。ギリシア語トリスケリオン(希 τρισκέλιον)またはトリスケレース(希 τρισκελής)は「三本脚のもの」という意味で、トリスケルの語源です。

 トリスケルは新石器時代に遡る古い意匠で、有史以前のヨーロッパに広く分布していました。大方の学者の意見によると、トリスケルは太陽の象徴です。三つの渦巻は太陽の三つの様態、すなわち日の出の太陽、中天に懸かる太陽、日没の太陽を表すと考えられています。





 十字架型ペンダントやメダイユは打ち抜きと打刻によって製作される場合が多いですが、本品は手間をかけて鋳造されています。本品が鋳造されていることは、十字架交差部を取り巻く四つの孔を裏側から観察すれば分かります。





 上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。本品はクロワ・ド・クゥ(仏 croix de cou 十字架型ペンダントのひとつです。ケルトのキリスト教文化に基づきつつも、信心具ではなく装身具ですので、どなたにも気軽にお使いいただけます。







 このブルターニュ十字は 1960年代のフランスで作られたヴィンテージ品(アンティーク品)で、現在では手に入りません。十字架型ペンダントは珍しい品物ではありませんが、クロワ・ブルトンヌは稀少です。

 本品はおよそ五十年前のものですが、珍しいことに未販売の新品として残っていたために、極めて良好な保存状態です。特筆すべき問題は何もありません。





本体価格 8,800円 販売終了 SOLD

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