クロワ・ド・クゥ
croix de cou




(上) 金、真珠、シトリンによるクロワ・ド・クゥ 36.8 x 26.1 mm 当店の商品です。


 「クロワ・ド・クゥ」(croix de cou フランス語で「首の十字架」の意)とは首に懸ける十字架形ペンダントのことで、「クロワ・ド・デヴォシオン」(croix de dévotion 「信心の十字架」の意)、「ビジュ・ド・ポワトリン」(bijoux de poitrine 「胸のジュエリー」の意)とも呼ばれます。

 「クロワ・ド・クゥ」はキリスト教をテーマにしつつも、純然たる信心具ではなく、ジュエリー的要素が強い品物ですが、完全に世俗的なジュエリーでもありません。カトリック文化圏において、結婚は教会が定める秘蹟のひとつですが、「クロワ・ド・クゥ」は宗教的意味を伴うゆえに、男性から婚約者の女性に贈られることが多くあります。


【地方特有のクロワ・ド・クゥ】

 「クロワ・ジャネット」(croix Jeannette) は最もよく知られたクロワ・ド・クゥです(註1)。クロワ・ジャネットはパリとニオールという大きく離れた場所で同様の意匠のものが制作され、フランス全土で愛用されました。これに対してフランスの各地方には、その地方特有の意匠に基づくクロワ・ド・クゥも多く存在します。

 フランスにおける地方色豊かなビジュ(ジュエリー)は、フランス革命以前の18世紀頃、北仏ノルマンディーで制作されるようになったクロワ・ド・クゥとサン・テスプリ(下向きの鳩を模ったペンダント)が最初です。次に地方色豊かなビジュが制作されたのは南仏サヴォワとプロヴァンスで、そののちにクロワ・ジャネットが全仏に広まりました。特にサヴォワにはクロワ・ド・クゥの変異が多く、十種類を数えることができます。

 各地方のクロワ・ド・クゥについては、稿を改めます。



註1 最もよく知られた形状の「クロワ・ジャネット」のみを「クロワ・ジャネット」と呼んで、「『クロワ・ジャネット』は『クロワ・ド・クゥ』の一部である」と言うこともできます。また「クロワ・ジャネット」という名称を広義に使用し、さまざまな形状の「クロワ・ド・クゥ」を「クロワ・ジャネット」と総称することもあります。後者の場合、「クロワ・ド・クゥ」と「クロワ・ジャネット」は同義語です。

 当ウェブサイトでは「クロワ・ド・クゥ」の名称を広義に、「クロワ・ジャネット」の名称を狭義に使うこととします。



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