スティール・エングレーヴィング 「リュズのテンプル騎士団聖堂」

Church of the Knights Templars, at Luz


原画の作者 トーマス・アロム (Thomas Allom 1804 - 1872)

版の作者 ヘンリー・アドラード (Henry Adlard, fl. 1828 - 1869)


画面サイズ  縦 125 mm   横 184 mm

イギリス   1860年代



≪テンプル騎士団について≫

 テンプル騎士団は十字軍時代の三大騎士修道会のひとつであり、最も古い騎士修道会です。 1099年に第1回十字軍がエルサレムを占領してエルサレム王国を築いたあと、9名の騎士が聖地を守る誓いを立てて、第3代国王ボードワン2世(Baudoin II)によって王宮内に宿舎を与えられ、「神殿の貧しき騎士たち」(pauvres chevaliers du temple)と名乗りました。この名前は彼らの宿舎がソロモン神殿跡に隣接していたことによります。騎士たちは最初はたったの9名でしたので、エルサレム市内からヨルダン川に向かう巡礼を護衛する程度のことしかできず、また施し物によって貧しい生活をしていました。

 騎士団は シトー会のベルナール(St. Bernard de Clairvaux, 1090-1153)の助力を得て、聖ベネディクト戒律を採用し、1128年に教皇ホノリウス2世から修道会としての認可を得ました。彼らは貞潔、清貧、服従の3つの誓いはもちろんのこと、生活全般に及ぶ非常に厳しい戒律を設け、また赤い十字架を縫いつけた白い衣を修道服としました。宗教的な熱情と騎士の武勇の結合である騎士修道会はたいへんな人気を呼んで、騎士団に加わりたいと願うものが押し寄せました。教皇は騎士団を教皇直属の組織とし、聖俗を問わずローマ教皇以外のあらゆる権威も騎士団に対して権力を行使できないとしました。騎士団の成員ひとりひとりは清貧であっても騎士団の財産は増し加わる一方で、一時は9000 箇所もの領地を有し、活発な金融活動を行なっていました。パリの騎士団修道院には莫大な富が蓄えられて、ヨーロッパ世界最大の銀行となっていたのです。

 この富に目をつけたフランス国王フィリップ4世は騎士団を異端として断罪して財産を没収しようと企んで、でっちあげによって騎士団員を次々に火刑に処し、騎士団はついに解散されて、国王は騎士団の財産を奪うことに成功しました。


≪この版画のテーマについて≫

 フランスとスペインの国境近く、後に聖母マリアの聖地として有名になるルルドから30kmほど離れたピレネーの山間、ポー(Pau)川の谷に小村リュズ(Luz)があります。リュズはその歴史を11世紀にまでさかのぼることができるペイトワ地方(Pays Toy)の中心地であり、当時テンプル騎士団によって建てられた古い教会の周りに発展した村です。

 南フランスの聖堂には城砦そのもののように要塞化した建築が多く見られます。リュズの聖堂も最初はイスラム教徒、次にスペイン人に対する防衛拠点となったために要塞化されて、狭間のある城壁で囲まれ、アプス(後陣)北側には天守の役割を果たす塔が建てられています。リュズの聖堂は北の扉口にロマネスク彫刻があり、また16世紀に増設された礼拝堂があります。

 聖堂を武装することは1123年のラテラノ公会議で禁止され、既存の城砦型聖堂は取り壊しを命じられましたが、この決定はいっこうに守られず、ラングドック地方(南フランス)を中心に城砦そのもののような聖堂の建設が続きました。北フランスにも同様の動きがあり、モン=サン=ミシェルは最も有名な例となっています。


参考写真 フランスにおける城砦型聖堂j建築 4例

 ブーシュ・デュ・ローヌにあるサント=マリ=ド=ラ=メール聖堂

 アルビ司教座聖堂サント=セシル

 マルセイユの聖ヴィクトル修道院

 ブルターニュのモン=サン=ミシェル

ラングドック地方(南フランス)の要塞化した教会に関する文献
SHEILA BONDE, Fortress-Churches of Languedoc: Architecture, Religion, and Conflict in the High Middle Ages, New York: Cambridge University Press, 1994. ISBN 0-521-45084-5


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エングレーヴィングの本体価格 32,800円 (額装別)

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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