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アルビ司教座聖堂サント＝セシル
Cathédrale Sainte-Cécile d'Albi

　サント＝セシル (Sainte-Cécile) はアルビ大司教の司教座聖堂で、カタリ派に対して軍事上の優位を誇示するための城砦のような特異な外観で有名です。全長 113.5メートル、全幅 35メートル、鐘楼の高さ 78メートルの規模を誇ります。

　先代のアルビ司教座聖堂はロマネスク建築で、11世紀に建てられ、16世紀まで存続していました。ロマネスクの聖堂は石造りで、側廊があったと考えられています。
　現在のサント＝セシルはゴシック様式で、先代のロマネスク式聖堂に隣接して建てられたものです。レンガ造りで、側廊を欠く身廊のみの構造（シングル・ネイヴ）です。また翼廊もありません。

【聖堂の外観】

　アルビ司教座聖堂サント＝セシルは 1282年頃、アルビ司教ベルナール・ド・カスタネ (Bernard de Castanet, c. 1240 - 1317) のもとで建設が始まり、15世紀の終わりまで工事が続きましたが、最上部まで完成することはなく、19世紀以前は木造の屋根が架かっていました。19世紀、穹窿に雨漏りが発生したために新しい屋根を設置する工事が行われて現在の姿になっています。このときガーゴイルも付け加えられました。

　サント＝セシルの特異な外観は、異端派、海賊、地元諸侯などの脅威に対抗するために要塞化した12世紀ラングドックの教会建築を引き継いでいます。13世紀にラングドックで建てられた要塞的な聖堂としては、ベジエ司教座聖堂サン＝ジュスト (Cathedrale Saint-Just de Beziers)、ナルボンヌ司教座聖堂サン＝ナゼール (Cathedrale Saint-Nazaire de Narbonne) とならび、これらの聖堂は身廊が側廊を伴わない点でもサント＝セシルと共通しています。

　サント＝セシルの要塞化はこれら 3箇所のなかで際立っています。サント＝セシルは丘の上に建てられています。聖堂西側は正面入り口とはなっておらず、巨大な鐘楼（1355 - 66年、最上部は 1485 - 92年）に守られるとともに、向かいにはアルビ伯の居城がありました。聖堂北側は要塞化した司教館（13世紀末）と、川まで伸びる修道院の建物で守られていました。聖堂東側は市街と接していますが、ここには入り口がありません。聖堂南側が正面入り口となっているのですが、ここは跳ね橋で守られていました。

　サント＝セシルの外壁には半円形の控え壁が連続し、その基部は城壁のような厚みがあります。聖堂最上部は未完成に終わったため、もとの設計がどのようであったか不明ですが、狭間付きのデザインであった可能性もあります。

　サント＝セシルの外壁はレンガ造りですが、南側に張り出した正面入り口のみは石造りです。この部分はアルビ司教となったドミニク・ド・フロランス（Dominique de Florence　在位 1394 - 1410）によって 1392年頃に作られ、1535年には後期ゴシック、フランボワイアン式の屋根が完成しました。

【聖堂の内部】

　サント＝セシルの内部は、その外観から想像もできないほど、絵画と彫刻で埋め尽くされています。

　聖堂西側オルガン席の下、曲面になった左右の壁面には、それぞれ 16.4 x 15.6メートルという大きなサイズのフレスコ画で「最後の審判」が描かれています。これらの作品はフランドルの画家たちによって 1474年から 1484年にかけて製作されたもので、後期中世の重要な作品のひとつと考えられています。

　穹窿の大フレスコ画はモデナとボローニャの画家たちによって 1509年から 1512年にかけて製作されたもので、97 x 28メートルのサイズはフランス最大です。天井は多数の画面に分割され、「フランスの青」(bleu de France) あるいは「王の青」(bleu de roi) と呼ばれるウルトラマリンの背景に、聖書に取材したものをはじめとする数々のテーマが描かれています。天井画 2面は聖セシリアに関するものです。聖セシリアに捧げられた聖堂は珍しく、特にフランスの司教座聖堂ではアルビが唯一の例です。

　1480年頃に製作された内陣障壁は、その彫刻群によってよく知られています。旧約聖書に取材した 33のテーマと、新約聖書に取材した 15のテーマ、70人の天使、コンスタンティヌス大帝、シャルル・マーニュが彫られています。