コミュニオン・ソラネルのブレスレット型ロザリオ 「マリアに倣う信仰で、心にイエスを迎え入れよ」 ヴェルメイユのクール付 有効長 18センチメートル


ブレスレットを閉じたときのサイズ 18 cm

全長 21 cm


クール(心臓)形メダイのサイズ 縦 16.9 x 横 13.6 mm (突出部分を含む)

ビーズの直径 7 mm


フランス  1900 - 20年代頃



 初聖体またはコミュニオン・ソラネルを受ける人のためのブレスレット型ロザリオ。一枚のメダイと十二個のビーズで構成されています。クール(ハート)形のメダイには、上部の環の左側基部に、800シルバーを表す「蟹」のポワンソン(貴金属検質所の刻印)があります。メダイには金めっきの名残が残っていますので、もともとは銀に金を被せたヴェルメイユ製品であったことがわかります。





 このブレスレット型ロザリオを平らなところで一直線に伸ばして測ると、全長は 21センチメートル、有効長は 18センチメートルです。ここでいう有効長とは環状になる部分の長さのことです。手首周りが 18センチメートルよりも少し小さめの方は、本品を快適にご着用いただけます。

 ビーズはたいへん透明度が高いクリスタル・ガラス製で、きらきらと美しく輝きます。それぞれのビーズは多数のファセット(小面)を有しますが、これらのファセットは驚くべきことに一面ずつ手作業でカット・研磨されています。





 メダイはクール(cœur フランス語で「心臓」「ハート」)を模(かたど)り、少女マリア(後の聖母)の横顔と、その前方に聖体が浮き彫りにされています。マリアの前後には白百合がありますが、彫刻家は白百合を少女マリアと並べるのでなく、あたかも少女マリアと一体化させるかのように重ねて彫っています。これは白百合の象徴する諸性質が、少女マリアの本来的属性であることを、視覚を通して強調的に表現しているのだと考えられます。

 白百合が象徴する諸性質とは、「純潔をはじめとする高い徳」、「神に選ばれた身分」、「神の摂理に対する信頼」の三つです。これら三つの性質はいずれもマリアに卓越的に当てはまりますが、それはマリア以外の人に当てはまらないということではありません。マリアはキリスト者の鑑(かがみ 手本)であり、キリスト者が見習うべき存在ですから、キリスト者はマリアを見習って、マリアに似た者となる義務があります。

 本品は初聖体またはコミュニオン・ソラネルを受ける十二歳の少女のために作られたものです。このメダイに刻まれたマリアはちょうど十二歳くらいの少女として表され、白百合が少女マリアに重ねあわされています。聖体を拝領するフランスの少女をマリアに擬したような、あるいはマリアをフランスの少女に擬したような本品の意匠は、聖体を拝領する少女たちがマリアに倣う生き方、信仰を身に付けるようにという願いを表すものに他なりません。




(上) 絹のリボンを結んだ立体カニヴェ 「初聖体の日」 多色刷り石版と絹布による紙人形付 119 x 77 mm フランス 19世紀末 当店の商品です。


 メダイがクール(cœur フランス語で「心臓」「ハート」)を象(かたど)っていることも示唆的です。古来、心臓は「心の座」(心が在る場所)と考えられていました。ブレスレット型ロザリオに付いているこのメダイは、聖体を拝領する少女の心を表します。少女の心に若きマリアと白百合、聖体を刻んだ意匠は、「少女の心が若きマリアのようであるように」、「少女の心が白百合のようであるように」、「少女が心にキリストを迎え入れるように」という願いを表します。

 マリアは優れた信仰ゆえに神の花嫁として選ばれました。そのマリアにも似て、花嫁衣装を着て聖体を拝領する少女はキリストに選ばれた花嫁であり、夫であるキリスト(聖体)を迎え入れます。カトリック文化圏の若者たちにとって、初聖体あるいはコミュニオン・ソラネルは、一人前の人間として社会に受け容れられるための大切な行事です。「高い徳性」と「神の摂理に対する信頼」を常に心に抱き、これから先の長い人生を歩まなければなりません。少女の心を表すクール(ハート)形メダイにマリアと白百合を刻んだ意匠は、このような願いを表しています。

 カトリックの聖体はキリストの御体です。キリストの受難は歴史上一度だけ起こったのではありません。キリストは現在も、象徴としてではなく現実において、ミサの度ごとに受難されています。しかるにキリストの受難は神の愛の極限的な顕れです。したがって少女の心を表すクール(ハート)形メダイに聖体を刻んだ意匠は、聖体を拝領してキリストを迎え入れた少女が、キリストに倣い、神を愛し隣人を愛する者となるようにとの願いを表しています。




(上) フィルマン・ピエール・ラセール作メダイユ 「マテルニテ」(母性) 直径 58.9 mm 当店の販売済み商品


 この繊細なクール形メダイは、十九世紀末から二十世紀前半に活躍したフランスのメダイユ彫刻家、フィルマン・ピエール・ラセール (Firmin Pierre Lasserre, 1870 - 1943) の作品です。フィルマン・ピエール・ラセールは 1870年6月6日、ピレネーの西端近くの小村バロート=カミュ(Barraute-Camu アキテーヌ地域圏ピレネー=アトランティック県)に生まれました。画家、彫刻家でもあったメダイユ彫刻家エメ・ミレ (Aimé Millet, 1819 - 1891)、及び画家アルベール・ブレオテ (Albert Bréauté, 1853 - 1939) に師事しています。サロン展では 1921年に銅メダル、1923年に銀メダル、1927年に金メダルを受賞しています。またレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを贈られています。





 上の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。少女マリアは整った顔立ちですが、顔の高さは三ミリメートルほどに過ぎず、目、鼻、口の各部は一ミリメートルに足りません。このように小さなサイズにもかかわらず、マリアが被る薄絹のヴェールが透けている様子、写実的な百合の花、聖杯の下にある雲などの描写は大型の浮き彫り彫刻に劣らない仕上がりです。フィルマン・ピエール・ラセールが、芸術性においても職人的な技量においても、極めて優れたメダイユ彫刻家であったことがよくわかります。





 本品の保存状態は良好で、特筆すべき問題はありません。メダイの写真は実物の面積を数十倍に拡大しているので、突出部分のわずかな磨滅が識別できます。しかしながら実物を肉眼で見ると、磨滅しているようにはまったく見えず、表面は滑らかで金属光沢があり、たいへん綺麗です。特筆すべき問題は何もありません。





本体価格 18,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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