ファティマの聖母
Nossa Senhora de Fátima





 ファティマはポルトガル中央部、サンタレン県オウレン市の地名で、1917年5月13日から始まって10月までの毎月13日に、3人の羊飼いの子供たちに対して聖母マリアが出現した場所として知られています。聖母は子供たちに対して「ロザリオの聖母」と名乗ったことから、「ファティマのロザリオの聖母」(Nossa Senhora do Rosario de Fátima) とも呼ばれます。

 聖母は7月13日の出現の際、人々が信じるために、最後の出現となる10月13日に奇跡を起こすことを約束しました。10月13日には 7万人もの人々が見守る中、太陽が色や大きさを変えて激しく回転するような動きを見せました。この不思議な現象についてはその場に居合わせた人々が目撃しただけでなく、科学者やジャーナリストによる多くの記録が残っています。

 ファティマに聖母が出現した1917年はロシアに革命が起こった年ですが、ファティマの聖母は子供たちに対し、ロシアを神に捧げれば世界に平和が訪れると語りました。ローマ教皇ピウス十二世はこの言葉に従い、1952年7月7日にロシアをマリアのけがれなき聖心に捧げました。


 聖母マリアの出現を受けた3人の子供たち


【ファティマの聖母の戴冠】



(上) 戴冠したファティマの聖母 当店の販売済み商品


 聖母像の冠には様々な形のものがありますが、ファティマの聖母のために作られた二つの冠はいずれも女王の冠を模ります。これは 1646年、当時のポルトガル王ジョアン四世(João IV o Restaurador, 1604 - 1656)により、聖母がポルトガルの女王とされたためです。

 1933年以来サラザールの独裁体制下にあったポルトガルは、第二次世界大戦時も中立を保ちました。ポルトガルの女性たちはこの国が戦争に巻き込まれず、夫や恋人、息子たちが戦場に駆り出されなかったことを感謝し、ジュエリーをはじめとする貴金属製品を聖母に捧げました。集まった貴金属製品はポルトの貴金属工房レイタン・エ・イルマン(Leitão & Irmão)に渡され、十二人の貴金属職人による数か月間の作業を経て二つの冠が制作されました。二つのうちの一方は金と宝石の冠、もう一方はヴェルメイユ(仏 vermeil 銀に金めっき)の冠です。二つの冠はいずれも 1942年に制作され、1946年5月13日、ファティマにおける聖母出現二十九周年の記念日に、同所において戴冠式が挙行されました。

 上の写真のメダイユにおいて聖母が被るのは、毎月十三日に聖母像に被せられる金の冠です。この冠は 313個の真珠と 2679個の宝石で飾られ、1.2キログラムの重量があります。十三日以外の日にはヴェルメイユの冠が聖母像に被せられます。 1981年5月13日、ヴァティカンにおいて教皇ヨハネ=パウロ二世の暗殺未遂事件が発生し、教皇は狙撃されて重傷を負いました。このとき教皇を傷つけた銃弾が 1984年にファティマの聖母に捧げられ、女王冠のグロブス・クルーキゲルの下部に、下向きに嵌め込まれました。グロブス・クルーキゲル(羅 GLOBUS CRUCIGER)はラテン語で「十字架付きの球体」という意味で、被造的世界全体を象る球に十字架を伴います。グロブス・クルーキゲルはキリストこそが被造的全世界(全宇宙)の支配者であることを象徴しています。ファティマの聖母の冠最上部に突出しているのが、グロブス・クルーキゲルです。


 ファティマやルルドをはじめ、各地に出現した聖母の像はすらりとした立ち姿ですが、それらの像は戴冠することによって縦の長さが一層強調されます。このような像の高さは聖母の世界軸性、すなわち聖母が被造的世界の天地を貫き、神と人とをつなぐアークシス・ムンディー(羅 AXIS MUNDI 世界軸)であることを視覚的に協調します。

 ラテン語アークシス(羅 AXIS)はギリシア語アクソーン(希 ἄξων)と同語源で、車軸、掛け金の軸、地軸など、回転する物の中心軸を指します。アークシス・ムンディー(世界軸)は聖地と同じものを指しますが、「聖地」が単に「聖なる世界に繋がる特別な地」という意味であるのに対し、「世界軸」という語には存在の序列、すなわち人の住む地上界が、聖なる世界に依存しているという観念が強く反映されています。

 聖母がなぜ神と人とを繋ぐ世界軸であるのかというと、それは聖母が受胎告知の際、自由意思によって救いを受け容れたからです。ファティマの聖母が幻視する子供たちに求めたことは、ロザリオを祈ることでした。ルルドの聖母もベルナデットに同じことを求めています。しかるにロザリオで唱える天使祝詞の前半は天使ガブリエルが少女マリアに語りかけた挨拶であって、これは救いの道をマリアに示した言葉に他なりません。マリアはこれを受け入れることにより、神と人を繋ぐ世界軸となりました。ロザリオの祈りを勧め、自らもロザリオを手に立つ聖母の姿は、救いの道イエスに通じる美しき門であるといえます。



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