聖アンドレアス 聖アンデレ
St. Andreas




(上) Simone Martini, Saint Andrew, c. 1330, tempera on wood, gold ground, 57.2 x 37.8 cm, The Metropolitan Museum of Art, New York


 聖アンドレアス(聖アンデレ)はシモン・ペトロの兄弟です。ガリラヤ湖畔でペトロと網を打っているときに、イエスから「わたしについて来なさい。人間をとる漁師にしよう」と声を掛けられて弟子になりました(マタイ 4: 18 - 19 他)。「ヨハネの福音書」によると、アンドレアスは洗礼者ヨハネの弟子でしたが、歩いておられるイエスを見た師が「見よ、神の子羊だ」というのを聞いてイエスについてゆき、また兄弟シモンをイエスに引き合わせました(ヨハネ 1: 35 - 42)。


(下) 「ペトロとアンドレアスの召命」 1925年の日付がある司祭叙階記念の小聖画。




 伝承によると、聖アンドレアスは 38年にビザンチウム(コンスタンティノープル)教会を創立しました。それゆえ聖アンドレアスはコンスタンティノープル総主教座の守護聖人とされています。


【外典文書「アンデレ行伝」】

 聖アンドレアスの事蹟を述べた新約正典以外の文書としては、外典「アンデレ行伝」があります。これは「ヨハネ行伝」「ペトロ行伝」「パウロ行伝」「トマス行伝」とともに、レウキウス (Leucius) という人物による書物とされて八世紀頃まで広く流布しており、エウセビオスやアウグスティヌスの著作にも言及がみられます。「ペトロ行伝」にあるクォー・ワディス、ドミネ(羅 QUO VADIS, DOMINE? 主よ、どのこ行かれるのですか)のエピソードは有名ですから、ご存知の方も多いでしょう。

 「アンデレ行伝」("VITA ANDREAE") はいくつかの写本が残っていますが、ほとんどは「原アンデレ行伝」が大幅に加筆されたものと考えられています。「原アンデレ行伝」は現存していませんが、ヴァティカン図書館にあるギリシア語写本 (Codex Vaticanus graecus 808) と、ユトレヒト大学にあるコプト語のパピルス断片 (Papyrus Copt. Utrtcht I) は、原資料に忠実な写本と考えられています。前者は使徒がパトラエに囚われていた際の事蹟がその内容となっていますが、殉教の部分は残っていません。「アンデレ行伝」の成立年代は最近の研究によって従来の説よりも早められ、190年よりも以前と考えられています。


【聖アンドレアス十字】

 「アンデレ行伝」によると、聖アンドレアスはペロポンネソス半島北端のパトラエで、十字架に架けられて殉教しました。「アンデレ行伝」の記述では、聖人は普通のラテン十字に括りつけられて殉教していますが、後世の伝承では、イエスと同じラテン十字に架かるのは畏れ多いという聖人の願いにより、X字形の聖アンドレアス十字が殉教に用いられたとされるようになりました。

 聖アンドレアスはスコットランドの守護聖人ですので、スコットランド国旗には聖アンドレアス十字があしらわれています。それゆえに聖アンドレアス十字はユニオン・ジャック(英国旗)の一部にもなっています。また聖アンドレアスはロシアの守護聖人でもあり、ロシア海軍旗にも聖アンドレアス十字があしらわれています。


【聖アンドレアスの図像学】

 聖アンドレアスは兄弟シモン・ペトロとともにイエスの最初の弟子であり、召命を受ける場面を描写した図像が見られます。


(下) Duccio di Buonisegna, The Calling of St. Peter and St. Andrew, 1308/11, tempera on wood, 43.5 x 46 cm, National Gallery of Art, Washington




 レゲンダ・アウレアには、処刑される直前の聖アンドレアスが、瞑想への思いを熱心に語ったという記述があります。この記述に基づき、聖アンドレアスは本を手にした姿で表されます。修道士の姿で表されることもあります。


(下) Adriaen Isenbrandt, The Archangel St. Michael, St. Andrew, and St. Francis of Assisi, oak panel, 127.3 x 81.2 cm, Museum of Fine Arts, Budapest




 エル・グレコによる下の作品で、聖アンドレアスがアッシジの聖フランチェスコとともに登場しているのは、やはり聖アンドレアスが瞑想する使徒とされているからでしょう。


(下) El Greco, St. Andrew and St. Francis of Assisi, 1587 - 97, oil on canvas, 167 x 113 cm, Museo del Prado, Madrid




 殉教を描いた作品では「アンデレ行伝」に従ってラテン十字が描かれる場合もあり、また「レゲンダ・アウレア」に従って聖アンドレアス十字が描かれる場合もあります。


(下) Caravaggio, The Crucifixion of St. Andrew, 1609/10, oil on canvas, 233x184cm, Cleveland Museum of Art



(下) Bartolome Esteban Murillo, The Martyrdom of Saint Andrew, 1675/82, oil on canvas, Museo del Prado, Madrid





【守護聖人としての聖アンドレアス、及び祭日】

 聖アンドレアスはスコットランドとプロシアの守護聖人です。また、聖アンドレアスが小アジアから黒海沿岸を北に向かい、キエフに達したというエウセビオス「教会史」の記述により、ルーマニア、ロシア、ウクライナの守護聖人ともされています。

 聖アンドレアスの祭日は11月30日で、この日はスコットランドの最も重要な祝日のひとつ(ナショナル・デイ)です。




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