missions pariossiales
ミシオン（仏 mission）とは、教区民の信仰心を高めることを目的にしたカトリック教会の運動です。農村部を中心とした各地の教区で、およそ10年から15年に一度、説教師をよそから招き、一週間ほどの日程で説教、ミサ、祈祷会、食事会、アトラクションなどさまざまな催しが行われます。ミシオンは 1970年代頃までのフランスで盛んに行われ、現在でも小規模ながら続けられています。
【クロワ・ド・ミシオン】
フランス各地で野外に見られる大きな十字架「クロワ・ド・ミシオン」（仏 croix de mission ミシオンの十字架）は、その地でミシオン・パロワシアルが行われた際、記念に立てられたものです。クロワ・ド・ミシオンの土台には、その地でミシオンが行われた年号と日付が書かれています。またアルマ・クリスティ（キリスト受難の道具）、すなわち酢を含ませた海綿を刺してキリストの口に差し出した棒、キリストの脇腹を突き刺した槍などが取り付けられることが多くあります。
下の写真は古い絵葉書で、フランス北西部の村シャゼ＝シュラルゴ（Chazé-sur-Argos ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏メーヌ＝エ＝ロワール県）のクロワ・ド・ミシオンを写しています。
下の絵葉書はフランス中南部の村サン＝アマン＝ロシュ＝サヴィーヌ（Saint-Amant-Roche-Savine オーヴェルニュ地域圏ピュイ＝ド＝ドーム県）のクロワ・ド・ミシオンを写しています。消印の日付は1911年です。
【スヴニール・ド・ミシオン】
ミシオンに参加した信徒には、スヴニール・ド・ミシオン(Souvenir de Mission) と書かれたロザリオやメダイが教会から与えられました。スヴニール・ド・ミシオンとは、フランス語で「ミシオンの記念品」あるいは「ミシオンからの贈呈品」という意味です。これらの品物は暖炉の上など家族の目に付く場所に飾られました。
下に示すブロンズ製クルシフィクスは十九世紀のもので、リヨンのメダイユ彫刻家リュドヴィク・ペナン（Ludovic Penin, 1830 - 1868）の作品です。裏面にスヴニール・ド・ミシオン(Souvenir de Mission) の文字があります。
当店の商品です。下の写真のロザリオは十九世紀後半から二十世紀初頭にフランスで製作されたロザリオです。クルシフィクスの裏面にスヴニール・ド・ミシオン（Souvenir de Mission）の文字があります。
当店の商品です。【タブロー・ド・ミシオン】
タブロー・ド・ミシオン（仏 tableau de mission ミシオンの絵、ミシオン用図版）とは、民衆のためにカトリックの教えを視覚的に表した宗教教育用の図版で、ミシオンで使用されることからこのように呼ばれています。
人頭付きの心臓のなかにさまざまな象徴を描き込んだ作品が多く、稚拙な様式ながらメッセージ性は豊かです。画面が心臓形であるのは、心臓が心の宿る場所と考えられたからです。絵のテーマはほとんど常に天国と地獄で、祈り、喜捨、禁欲、節制、苦行などの善行を象徴する事物と天国の様子、及び飲酒、賭け事、虚栄などの悪行を象徴する事物と地獄の様子が描かれます。
下の写真はフランス本土の北西端、フィニステール（Finistère ブルターニュ地域圏）の司祭フランソワ＝マリ・バラナン師 (François-Marie Balanant, 1862 - 1930) の著書（"Taolennou ar Mission", 1899）に載っている挿絵のひとつで、あらゆる象徴で画面が埋め尽くされています。
タブロー・ド・ミシオンは十六世紀に北フランス、ブルターニュで描かれ始めました。後にはフランス国外を含めて広い範囲に普及し、二十世紀中頃まで使われ続けました。
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