「マーテル・ドローローサ」 群衆の前に引き出されたイエズスを見つめる悲しみの聖母 重厚な古色のアンティーク・メダイ 直径 21.6 mm


突出部分を除く直径 21.6 mm

フランス  20世紀初頭頃



 一方の面にエッケ・ホモー(ECCE HOMO 「この人を見よ」)のキリストを、もう一方の面にはマーテル・ドローローサ(MATER DOLOROSA 悲しみの聖母)を、それぞれ浮き彫りにしたメダイ。およそ百年、あるいはそれ以上前にフランスで制作されたアンティーク品で、重厚な古色に被われています。





 一方の面には茨の冠を被ったキリストの横顔を立体的な浮き彫りで表し、周囲にはゴシック典礼体によるラテン語で「エッケ・ホモー」(ECCE HOMO) と彫られています。


 イエズスがローマ兵たちから侮辱され、ローマ総督ポンティウス・ピラトゥス(ポンテオ・ピラト)によって群集の前に引き出されたときの様子は、すべての福音書に記録されています。マタイによる福音書には次のように書かれています。

 それから、総督の兵士たちは、イエスを総督官邸に連れて行き、部隊の全員をイエスの前に集めた。そして、イエスの着ている物をはぎ取り、赤い外套を着せ、茨で冠を編んで頭に載せ、また、右手に葦の棒を持たせて、その前にひざまずき、「ユダヤ人の王、万歳」と言って、侮辱した。また、唾を吐きかけ、葦の棒を取り上げて頭をたたき続けた。このようにイエスを侮辱したあげく、外套を脱がせて元の服を着せ、十字架につけるために引いて行った。(「マタイによる福音書」27章27-31節 新共同訳)

 通常「この人を見よ」と訳されるラテン語「エッケ・ホモー」(ECCE HOMO) は、茨の冠をかぶせられ、緋色のガウンを着せられたイエスを、ピラトが民衆の前に連れ出して、「ほら、この人だ」と示したときの言葉です。すなわち「エッケ・ホモー」とはラテン語で「ほら、この人だ」「見よ、この男だ」という意味です。「ヨハネによる福音書」19章4-5節に次の記述があります。

 ピラトはまた出てきて、言った。「見よ、あの男をあなたたちのところに引き出そう。そうすれば、わたしが彼に何の罪も見いだせないわけが分かるだろう。」イエスは茨の冠をかぶり、紫の服を着けて出て来られた。ピラトは「見よ、この男だ」と言った。(「ヨハネによる福音書」19章4-5節 新共同訳)


 本品に彫られたイエズスは、とりわけ横顔であるゆえに、感情表現を抑制した描写となっています。しかしながら群衆のほうを向いたイエズスには、聖母や弟子たちの姿も見えていたに違いありません。実際、本品の浮き彫りは、イエズスの顔を向って左向き、聖母の顔を向って右向きに彫っています。茨の冠を被ったまま聖母を見つめるイエズスの目には、子としての悲しみが宿っています。





 もう一方の面にはヴェールを深くかぶって悲しみに沈む「マーテル・ドローローサ」が、イエズスと同様に立体的な浮き彫りで表されています。聖母はヨーロッパの人々に愛された故に、図像のヴァリエーションもイエズス像以上に豊富で、優しい微笑みを浮かべて人々を守る姿や、戴冠して栄光に輝く姿の図像も多く制作されています。しかしながら本品の聖母は、信仰を保ちつつも悲しみに沈む一人の母親として描かれています。悲しみつつもまっすぐに前を向いた聖母の視線の先にあるのは、鞭打たれたうえに茨の冠を被せられ、群衆の前に引き出されたわが子の、血にまみれた痛々しい姿です。





 本品は百年以上前に制作された真正のアンティーク品で、美しい古色に被われています。しかしながら突出部分にも磨滅はほとんど見られず、古い年代にかかわらず良好な保存状態です。立体的でリアルな描写に、あたかもイエズスと聖母が眼前におられるかのような錯覚を覚えます。





本体価格  11,800円 販売終了 SOLD

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