優品 リュドヴィク・ペナンとジャン・バティスト・ポンセの共作 聖心の絵を示す福者マルグリット=マリ ブロンズの小型メダイ 直径 15.7 mm


突出部分を除く直径 15.7 mm

フランス  19世紀末から20世紀初頭



 マルグリット=マリ・アラコック (Ste. Marguerite-Marie Alacoque, 1647 - 1690) が 1864年に列福されて以来、フランスではキリストの聖心にフランスを奉献する「悔悛のガリア」(Gallia poenitens) の運動が国民的規模で盛んに推進されました。また1900年にはリヨン近郊ロザンヌ (Lozanne) とパレ=ル=モニアルを結ぶ鉄道線が開通しました。それゆえ大聖年に当たる1900年に、聖心の地パレ=ル=モニアルは大勢の巡礼者を集め、その規模はルルドに並ぶものとなりました。

 本品はふたりの高名なメダイユ彫刻家の共作として、大聖年に当たる1900年頃の時期に制作された小さなメダイで、「メダイユの国」フランスならではの細密浮き彫りの秀作として高い芸術性を備えています。





 一方の面には、カドリロブ(quadrilobe 四つ葉型)と正方形を組み合わせたゴシック風の枠内に、聖心のキリストを浮き彫りにしています。キリストの胸に輝く聖心(サクレ=クール)は、上部に十字架を突き立てられ、茨の冠に取り巻かれながらも、人知を絶する烈しさの愛を炎のように噴き上げ、眩(まばゆ)い光を発して輝いています。キリストは柔和な表情で罪びとを見つめつつ、痛々しい釘の傷が大きく口を開けた左手で聖心すなわち神の愛を指し示し、やはり釘の穴がある右手を差し出して罪びとを招いています。

 キリストの背景は微小な点による装飾で埋められています。メダイの最下部に、リヨンのメダイユ彫刻家リュドヴィク・ペナンのサイン (PENIN LYON) が刻まれています。





 19世紀のフランスではメダイユ彫刻が最も美しく開花しました。リュドヴィク・ペナン (Ludovic Penin, 1830 - 1868) は 19世紀フランスにおいて宗教分野の浮き彫り彫刻に最も活躍した芸術家で、弱冠34歳であった1864年、当時の教皇ピウス9世に豊かな才能を認められ、カトリック教会御用達(ごようたし)のメダイユ彫刻家、グラヴール・ポンティフィカル (graveur pontifical) の称号を受けますが、惜しくもその4年後に亡くなってしまいました。

 上の写真は実物の面積を 90倍に拡大しています。定規のひと目盛は 1ミリメートルです。本品の直径はわずか 15ミリメートルほどであり、キリストの顔と両手、聖心はいずれも 2ミリメートルに満たない極小サイズですが、リュドヴィク・ペナンはあたかも大型の浮き彫り作品のような正確さで、自然なプロポーションの人物像を制作しています。罪びとをまっすぐに見つめるキリストの顔と、柔和な手の表情には、不可視の「神の愛」が見事に形象化されています。





 メダイのもう一方の面には、マルグリット=マリの半身像が大きく浮き彫りにされています。聖母訪問会の修道女姿のマルグリット=マリは、あたかも自分の心臓と重ね合わせるかのように、聖心の絵を胸の前に掲げています。マルグリット=マリを取り巻くように、次の言葉がフランス語で記されています。

  CE SACRÉ CŒUR RÈGNERA MALGRÉ SATAN  この聖心、サタンに打ち勝ちて総べ治むるべし。

 なおマルグリット=マリが列聖されるのは 1920年のことです。このメダイが制作された時点で、マルグリット=マリは福者ですので、聖人の後光はまだ表現されていません。





 上の写真は実物の面積を 90倍に拡大しています。定規のひと目盛は 1ミリメートルです。こちらの面の彫刻も、聖女の顔や手、聖心の画像はいずれも 2ミリメートルに満たない極小サイズであり、キリスト像と同様に、驚くべき精緻さを実現しています。マルグリット=マリの容姿は肖像画によってよく知られていますが、浮き彫りの顔は紛う方なきマルグリット=マリであるばかりか、救い主の聖心にすべてを委ねた信仰が、穏やかな表情に良く表れています。


(下) マルグリット=マリが幻視した聖心と、聖女自身が書き記した祈り。フランスの小聖画 当店の商品です。







 メダイの二面は作風が異なっており、こちらの面にはゴシックの枠がありません。この面の下部には、マルグリット=マリの左右に、ふたりの彫刻家「ペナン」と「ポンセ」の名前が刻印されています。リュドヴィク・ペナンは 1868年に早世しますが、数多くの作品がジャン=バティスト・ポンセ (Jean-Baptiste Poncet, 1827 - 1901) の手によって新たな生命を吹き込まれ、20世紀初頭頃まで制作され続けました。ペナンとポンセの手による美しい作品群は、「カトリック教会の長姉」(fille aînée de l'Église) にして「悔悛のガリア」(GALLIA POENITENS) でもあったこの時期のフランスで、カトリック信仰の興隆に力を発揮しました。





 本品は百年以上前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず、突出部分に磨滅は認められず、驚くほど良好な保存状態です。本品の素材はブロンズに金めっきを掛けたもので、写真では艶が無いように見えますが、実物には金色に美しく輝いています。





16,800円 販売終了 SOLD

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