リュドヴィク・ペナン、ジャン=バティスト・ポンセ作 「幼子イエスを抱く聖ヨセフ」「子供を見守る守護天使」 父と子のメダイユ 大型の名品 直径 32.6 mm


突出部分を除く直径 32.6 mm  最大の厚さ 3.2 mm  重量 13.1 g

フランス  1870 - 80年代



 聖父子すなわち幼子イエスを抱く聖ヨセフ、及び子供を見守る守護天使の円形メダイ。19世紀後半、1870年代から 1880年代頃にブロンズで鋳造された作品で、直径 32ミリメートル、最大の厚さ 3.2ミリメートル、重量 13.1グラムという立派なサイズです。





 一方の面には、カドリロブ(quadrilobe フランス語で「四つ葉形」)を正方形と組み合わせたゴシック風の枠内に、神に選ばれた信仰の人ヨセフの頼もしい姿を浮き彫りにしています。堂々とした風貌と体格の聖ヨセフは、左腕に息子イエスを抱いています。幼いイエスは右腕で父につかまりつつ、体をねじって差し伸べた左手の掌(てのひら)を前に向けて、罪びとを招いています。ヨセフの右腕側には、三つの花を咲かせた一本の百合が見えます。ゴシックの枠には連続する点が穿たれ、聖父子の背景には小さな十字架型装飾が散りばめられています。メダイ最下部に「ペナン」(PENIN)、「ポンセ」(PONCET) のサインがあります。

 リュドヴィク・ペナン (Ludovic Penin, 1830 - 1868) は、19世紀前半以来四世代にわたってメダイユ彫刻家を輩出したリヨンのペナン家の一員です。豊かな才能を認められ、弱冠34歳であった1864年、当時の教皇ピウス9世により、カトリック教会の公式メダイユ彫刻家 (graveur pontifical) に任じられましたが、惜しくもその4年後に亡くなってしまいました。

 早逝の芸術家リュドヴィク・ペナンは1870年代からアール・ヌーヴォーに至る時代を知らずに亡くなったわけですが、リュドヴィク・ペナンの作品は、三歳年上の同郷の芸術家ジャン=バティスト・ポンセ (Jean-Baptiste Poncet, 1827 - 1901) の手によっていわば「現代化」され、1870年代以降においても愛され続けました。ジャン=バティスト・ポンセは画家でもあり、メダイユ彫刻家でもある人で、ペナンに比べて都会風に洗練された典雅な作風が特徴です。ペナンの没後にポンセが手を加えて「現代化」した作品は、信心具としてのメダイによく見られ、"PENIN PONCET", "P P LYON" 等、ふたりの名前が併記されています。リュドヴィク・ペナンの作品は、信心具のメダイであっても、美術メダイユに劣らない水準で制作されているものが多く、本品もその一例です。


(下・参考画像) リュドヴィク・ペナン作 ブロンズの小型メダイユ 「竪琴を弾く聖セシリア」 オリジナルの箱入り 1860年頃 当店の商品です。




 メダイにおけるヨセフとマリアを比べると、図像表現にはいくつかの共通点があります。聖母子像のマリアはイエスの向かって左側に描かれることが多いのですが、これはマリアが天上において「イエスの右(すなわち、向かって左)」の座を占めていることを表します。絵画や浮き彫り彫刻においてヨセフが幼子イエスを抱く場合も、ヨセフはイエスの右(向かって左)にいる作例が大多数を占めますが、これは聖母子像に倣って描かれているためでしょう。また父子は互いに睦みつつも両者ともほぼ正面を向き、ホデーゲートリア(Ὁδηγήτρια 救い主を世に示す聖母)型の画面構成となっています。百合はマリアのアトリビュート(聖人を象徴する物品)であり、マリアとともに描かれますが、聖父子像のヨセフもまた百合とともに描かれます。イエスが向かって右側に描かれる点、イエスを人々に示すかのような抱き方をしている点、百合が描かれる点のいずれにおいても、本品を含めた多くの聖父子像は聖母子像と共通しています。

 しかしながらヨセフとマリアの図像表現には、ひとつの大きな違いがあります。彫刻や絵画において単独で表されることも多いマリアと違い、ヨセフはほとんど常に幼子イエスを伴います。これは「父」としての属性が強調されているためです。





 聖父子像のヨセフは百合を持っています。通常この百合はヨセフがマリアの浄配であること、すなわちマリアとの間に肉体関係が無いことの象徴であると解されています。この解釈は決して誤りではありませんが、聖父子像の百合には純潔の象徴にとどまらない積極的な意味があります。

 ヨセフの百合が純潔の象徴に過ぎないならば、ヨセフはイエスを抱かない単独像であってもよいはずです。百合を持ったヨセフを、イエスではなくマリアとともに描けば、「純潔」の意味はさらに強調されるでしょう。しかしながら実際には、百合を持ったヨセフは、単独像でもなく、マリアとともにでもなく、幼子イエスとともに描かれます。これはどうしてでしょうか。

 百合の象徴性は多様であり、「純潔」を表す以外にも、「神に選ばれた身分」、及び「すべてを神に委ねる信仰」を表します。旧約の「雅歌」 2章 2節ではユダヤ民族が「茨の中に咲きいでたゆりの花」に譬えられていますし、キリスト教では同じ聖句が神に選ばれたマリアを指すと解釈されています。また「マタイによる福音書」 6章及び「ルカによる福音書」 12章では、栄華を極めたソロモンに勝って美しく装う百合が、神の摂理への無条件的な信頼、揺るぎない信仰を象徴しています。

 ヨセフはイエスの父として神に選ばれました。また夢に現れた天使の言葉を信じて、懐妊したマリアを妻として受け入れました。それゆえ力強い父ヨセフが幼子イエスをしっかりと抱いている図像において、百合は純潔を表すというよりも、むしろヨセフが信仰ゆえに父として選ばれたことを強調していると考えられます。





 このメダイに刻まれた百合は、何よりもまず、神によってヨセフが選ばれ、幼子イエスの父にふさわしいとされたことを表しています。ヨセフは浄配でもあり信仰者でもありますが、本品において堂々と力強いヨセフが幼子イエスを抱く姿は、父としての属性をとりわけ強調した表現となっています。

 リュドヴィク・ペナンがこのメダイに彫った聖父子像を注意深く観察すると、ヨセフがイエスを抱く抱き方が、聖母子像におけるマリアの抱き方とは異なることに気付きます。聖母子像のマリアは幼子の体に両手を添えて、母子が密着するような抱き方をしています。しかるに本品の浮き彫りにおいて、ヨセフは幼子の体を力強い左腕でしっかりと支えつつ、右手は幼子の足を下から支えて、あたかも自らの足で立つイエスを支えるかのような姿勢を執っています。

 正統教義のキリスト論によると、イエスは三位一体の第二のペルソナ、全知全能の神であると同時に、まったくの人間でもあります。それゆえ幼子イエスはどこにでもいる普通の子どもと同様に、知恵においても背丈においても少しずつ成長されました。(「ルカによる福音書」 2: 52) したがって幼子の健全な成長に両親の存在が大きな役割を果たしたことは、普通の子どもの場合とまったく同様です。幼子イエスは信仰深い両親に育てられ、人間として成熟していったのです。

 その過程において、神に選ばれたヨセフは父親としての役割を立派に果たしました。父ヨセフがいなければ、イエスは神の意志に従って受難する強さも信仰も得ることが無かったでしょう。マリアがイエスを生むために夫は必要でなかったにもかかわらず、神がマリアの夫にヨセフを選び給うたのは、イエスの成長に父が必要であったからなのです。リュドヴィク・ペナンはこのメダイのヨセフを何よりもまず「父」として表しているのであり、本品の白百合は神に選ばれた父の象徴に他なりません。





 もう一方の面には、カドリロブを正方形と組み合わせたゴシック風の枠内に直径 24ミリメートルの円形画面を配し、幼い少女と雲に乗る守護天使を浮き彫りで描きます。

 守護天使は神の軍人であり、地上のすべての軍隊を一撃で殲滅する最強の存在ですが、いまは母のように優しい横顔を見せて子供を見守り、天を指さして神の愛を説いています。ふっくらと柔らかい子供の足は履物を履いておらず、「詩篇」 91篇 11節から13節を思い起こさせます。該当箇所を新共同訳により引用します。
     Angelis suis mandavit de te, ut custodiant te in omnibus viis tuis; in manibus portabunt te, ne unquam offendas ad lapidem pedem tuum. Super aspidem et basiliscum ambulabis, et conculcabis leonem et draconem.    主はあなたのために、御使いに命じて、あなたの道のどこにおいても守らせてくださる。彼らはあなたをその手にのせて運び、足が石に当たらないように守る。あなたは獅子と毒蛇を踏みにじり、獅子の子と大蛇を踏んで行く。


 少女と守護天使の背景には小さな十字架装飾が散りばめられ、円形画面の枠はミル打ちを模した点状装飾で飾られています。天使と少女の足下に「ペナン」(PENIN)、「ポンセ」(PONCET) のサインがあります。カドリロブを正方形と組み合わせたゴシック風の枠と、中央の円形枠に挟まれた部分は、トレフル(クロバー形)および星型の装飾で埋め尽くされています。





 本品の制作年代は、1870年代から 1880年代です。本品と同時代のメダイはほとんどの作例が小さく薄く、スクリュー・プレスの打刻による浅浮き彫りですが、本品は例外的に立派なサイズで、コストと手間を惜しむことなく鋳造により制作されています。このため同時代に制作された通常のメダイに比べ、浮き彫り彫刻はたいへん立体的であり、聖ヨセフと幼子イエス、少女と守護天使を、あたかも眼前に見るかのような錯覚さえ覚えます。

 上の写真は本品のサイズを同時代のメダイと比較したものです。本品の上に乗っているのはロレトの聖母のメダイで、本品と同時代の品物です。





 本品は百数十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず、保存状態は良好です。突出部分に軽い磨滅が認められますが、実物を肉眼で見ると全く気にならず、特筆すべき問題は何もありません。お買い上げいただいた方には必ずご満足いただけます。





34,800円 販売終了 SOLD

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