金色と三色のエマイユ・シャンルヴェ モンマルトルの聖心教会 サクレ・クールのバシリカ 巡礼記念のメダイ 20.5 x 17.6 mm


突出部分を含むサイズ 縦 20.5 x 横 17.6 mm

フランス  1930年代



 ギリシア十字に三色のエマイユを施した美麗なメダイ。1930年代頃のフランスにおいて、モンマルトルのサクレ=クールのバシリカのために制作されたものです。





 表(おもて)面の中央交差部には、上部に十字架を突き立てたキリストの聖心(le Sacré-Cœur サクレ=クール)が彫られています。聖心は茨の冠に取り巻かれ、脇には大きな槍傷が口を開いていますが、人知を絶する強さの愛ゆえに烈しい炎を噴き上げて燃え、愛の視覚化であるまばゆい光輝を発しています。

 本品の彫刻において、心臓の高さは 3ミリメートル、上部の炎を合わせても 5ミリメートル強にすぎません。そのように小さなサイズにもかかわらず、聖心(サクレ=クール)は実際の心臓に似せてやや左右非対称に彫られ、聖心を取り巻く茨にも棘による凹凸が表されています。聖心から発出する光線は太さや長さが一本一本微妙に異なり、手作業によるメダイユ彫刻の温かみを感じさせます。





 聖心は透明感のある真紅のガラスにより、また聖心の光に明るく照らされる周囲は雪のように白い不透明ガラスにより、それぞれエマイユ(七宝)が施されています。本品の技法は「エマイユ・シャンルヴェ」(émail champlevé) で、金属を彫りくぼめた部分にフリット(fritte ガラスの粉末)を入れ、炉内で融解固着させています。すなわち本品は次のような工程で制作されています。

1. メダイユ彫刻家が鋳型を彫る。

2. 鋳造職人がメダイユを鋳造する。

3. ガラス職人がメダイユのくぼみにフリットを入れて焼成する。所定の枠からはみ出さないように気を付けつつ、くぼみの隅々まで余すところなくフリットを入れる作業、及び焼成中の温度管理には細心の注意を要する。

4. エマイユが融着したメダイユを炉内に入れたまま長時間かけて徐冷する。

5. 徐冷完了後、メダイユを炉から取り出し、もう一方の面についても 3, 4の作業を繰り返す。

6. 両面にエマイユを施したメダイユは研磨職人に引き渡され、コランダムまたはダイアモンドの粉末で研磨される。

7. 研磨が完了したメダイユはめっき職人に引き渡され、金めっきが施される。


 エマイユを施したメダイは、通常のメダイに比べて、制作に格段の手間がかかります。また「エマイユ・シャンルヴェ」は信心具のメダイに時おり使われる技法ですが、信心具のメダイの場合は研磨仕上げを行わないのが普通です。本品はほとんどの作例と異なって、めっきを掛ける前にメダイ両面の研磨仕上げを施しており、本格的なジュエリーと同等の丁寧さで制作されていることがわかります。





 もう一方の面には「スヴニール・デュ・サクレ=クール、モンマルトル」(souvenir du Sacré-Cœur, Montmartre) の金文字が、透明感ある青色エマイユを背景に浮かんでいます。「ル・サクレ=クール」というフランス語は、直接的には「キリストの聖心」を指しますが、「聖心に捧げられた聖堂」(聖心教会、サクレ=クール教会)をも意味します。したがって「スヴニール・デュ・サクレ=クール」とは、パリ、モンマルトルにある「サクレ=クールのバシリカ」に巡礼した記念、という意味です。

 なお「スーヴニール」(souvenir) は、英語を経由し、「スーベニア」という形で日本語に入っています。「スーベニア」というと観光客向けの安っぽい土産物を連想しますが、フランス語「スーヴニール」の語源はラテン語の動詞「スブウェニオー」(SUBVENIO) で、事物を主語とし、その事物が「人の心に到来する」「思い出される」という意味です。「スーヴニール」というフランス語は初聖体や真面目な巡礼など、人生において重要な出来事を思い出させる記念品に書かれる言葉であり、決して安っぽい土産物のことではありません。

 メダイ裏面のエマイユは、かつてカシミールから産出した最高のブルー・サファイアのように、わずかにすみれ色がかった華やぎのある青色です。この青はフランス語で「ブリュ・マリアル」(bleu marial)、英語で「マリアン・ブルー」(Marian blue) と呼ばれる「聖母マリアの青」です。文字の下にあしらわれたフルール・ド・リス(fleur de lys 百合の花)も、通常の百合と同様に、聖母マリアの象徴です。





 本品はフランス以外のものではありえないメダイです。すなわち本品がテーマとするモンマルトルの聖心教会(バジリク・サクレ=クール・ドモンマルトル)は、悔悛のガリアがキリストの聖心に捧げた奉献物であり、最もフランスらしい聖堂のひとつといえます。またルネサンス期のイタリアからフランスに伝わって開花したメダイユ彫刻も、近世以前に「リモージュもの」(l'Œuvre de Limoges) と呼ばれていたエマイユ・シャンルヴェも、いずれもフランスが最高の水準を誇る工芸技法です。

 本品はおよそ八十年前に制作された真正のアンティーク品ですが、信じがたいほど良好な保存状態です。エマイユにもめっきにも、剥落等の問題はいっさいありません。





15,800円 販売終了 SOLD

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