1850年代後半または 1860年代前半のフランスで制作された無原罪の御宿りなるマリアの美麗なカニヴェ。
表(おもて)面中央には、聖母マリアの半身像をインタリオ(intaglio 凹版)、すなわちグラヴュール(エングレーヴィング)とオー・フォルト(エッチング)で表し、植物を様式化した繊細な切り紙細工を、背景全体に施しています。下弦の月に乗る無原罪の御宿りは、眼差しを天に向け、交差させた両腕を胸に当てて神に祈っています。
聖母像を構成する線とスティプル(点描法の点)、背景を為すレース状の切り紙細工とも、このカニヴェは極度に細かく緻密です。切り紙細工にはエンボス(型押し)により立体的な細工が施されています。下の拡大写真において、定規のひと目盛は
1ミリメートルです。
さらに拡大します。聖母の肌はスティプルで表され、点の大きさと密度を変えることにより、微妙な陰翳を実現していることがわかります。スティプルの密度は、1平方ミリメートルあたり10個から20個を数えることができます。
聖母の衣の陰翳は、線の太さと密度に変化を付けることにより実現されています。暗部はクロスハッチ(斜めに交差した線)で表現し、さらに暗くしたい部分ではクロスハッチの菱形の中に点を加えて明度を落としていることがわかります。逆に明るくしたい部分は破線で表し、インクの量を最小限に抑えています。
聖母像の下、弦月の手前には、次の言葉がフランス語で記されています。
SAINTE MARIE VIERGE IMMACULEE 無原罪のおとめなる聖マリア
Prions Marie de nous obtenir la pureté et l'humilité. 純潔と神に従う気持ちをわれらに得させ給うように、マリアに祈りましょう。
弦月の両端に接する雲の横に、「意匠登録 パリ」(Déposé, Paris)、「メゾン・バセ」(Maison Basset) の文字が読み取れます。
裏面は聖母に援けを求める祈りから始まり、純潔 (purete ピュルテ) を守るために必要な心構えが記されています。内容は以下の通りです。なお「ピュルテ」とはフランス語で「純粋さ」のことですが、ここでは若い女性の貞操、性的純潔を指しています。
Marie, Vierge immaculee, obtenez moi la purete. | 無原罪のおとめなるマリアよ。わが純潔を守らせたまえ。 | |||
M. F. Fleur delicate, la purete doit craindre le moindre souffle; un seul
regard, un seul mot doit l'alarmer. |
優しき花よ。純潔は弱くかかる息をも怖れます。見られるだけでも、言葉を掛けられるだけでも、純潔を慄(おのの)かせるには充分です。 | |||
En matiere de purete, on a tout lieu de craindre, par la raison meme qu'on
ne craint pas assez. |
純潔について怖れを抱くのは、あまりにも当然なのです。本来ならばもっと怖れを抱くべきなのですから。 | |||
Bien qu'on ait remporte plusieurs fois la victoire, on n'est jamais invincible;
il faut donc toujour se defier de soi-meme, ne pas exposer au peril, et
eviter sans cesse les occasions que l'on peut prevoir. |
たとえ幾度もの勝利を得たとしても、敗北する可能性が無くなったわけではありませんから、自分を過信せず、危ない状況を避け、純潔を失うきっかけとなりうる事態があらかじめわかっているのなら、それを避けなければなりません。 |
|||
Quant aux dangers imprevus, priez le Seigneur de vous donner la force necessaire pour ne pas succomber, et il vous l'accordera, si vous le priez avec amour. | あらかじめ分からない危険に関しては、誘惑に打ち勝つのに必要な力をくださるよう、主に祈りなさい。愛を以って祈り求めるならば、主は力を与えてくださいます。 |
最下部に次の文字があります。
Paris Maison Basset, 33 r. de Seine パリ、メゾン・バセ セーヌ通り33番地
バセ社(メゾン・バセ Maison Basset)は18世紀初頭にパリ、サン=ジャック通りで創業した版画工房で、精細な地図を作成したことでよく知られています。1849年、ジュール・バセの代になってセーヌ通りに移り、1865年までカニヴェを制作しました。
表(おもて)面に描かれている「無原罪の御宿り」は、教皇ピウス9世が1854年12月8日に宣言した教義ですので、このカニヴェが制作されたのは
1850年代後半または 1860年代前半とみて間違いないでしょう。この時代は第二帝政期 (1852 - 1870年)であり、若い女性に純潔を勧める保守的な内容が、当時の社会の雰囲気をよく示しています。本品はおよそ150年前のものですが、繊細な切り紙細工には一箇所の破損も無く、完璧な保存状態です。
バセ社がカニヴェを制作していた期間は十数年で、大手の工房に比べて格段に短く、現在まで残る作品はいずれも稀少品です。バセ社のカニヴェは、いずれの作品も、ほぼ全面にグラヴュールを使用した精緻な作風が特長で、精細な地図を作っていた技術の蓄積が表われています。
カニヴェの価格 25,800円 販売終了 SOLD
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。木製フレームにベルベットを使用した額装を、手頃な価格で承ります。額の種類と料金につきまして、詳しくはこちらをご覧くださいませ。
額装のサンプル写真 1 壁掛け式額縁 14,700円
※ 額の価格にはベルベット張りマットを含みます。ベルベットの色はご希望に応じます。
額装のサンプル写真 2 高級写真立て 6,800円
※ 額の価格にはベルベット張りマットを含みます。ベルベットの色はご希望に応じます。
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