七歳の初聖体 「ぼくはきみがすきだよ。きみもぼくをすきになってね」 シャロン=シュル=ソーヌ(ブルゴーニュ)、カルメル会修道院ノートル=ダム・ド・ラ・ペ 1959年


中性紙にオフセット印刷


写真に写っている木製額のサイズ  縦 22.5 x 横 17.5 x 奥行 2 センチメートル

聖画のサイズ  縦 11 x 横 5.5 センチメートル


フランス  1959年



  秘蹟聖省(現在の典礼秘蹟省)が 1910年に出した宣言により、それまで12歳で行われていた「初聖体」(la première communion) の時期は、7歳に早められました。しかしながらその一方で、フランスにおいては、12歳のときに行われる盛大な聖体式は「コミュニオン・ソラネル」(la communion solennelle フランス語で「盛式聖体拝領」の意)という名前で存続しました。

 12歳の「コミュニオン・ソラネル」はカトリック教会が定める「秘蹟」ではありませんが、フランスの少年少女にとって人生の大きな区切りであり、重要な社会的行事と見做されています。したがって「コミュニオン・ソラネル」を記念する小聖画は多くみられます。

 しかし興味深いことに、肝心の「初聖体」を記念する小聖画はあまり目にする機会がありません。7歳で受ける「初聖体」は典礼上の「秘蹟」であり、「コミュニオン・ソラネル」よりもはるかに重要な行事であるはずですが、「コミュニオン・ソラネル」を盛大に祝う習慣のせいで、「初聖体」はいわばその陰に隠れてしまっているのでしょう。12歳の「コミュニオン・ソラネル」には子供を参加させても、7歳の初聖体を省略する家庭も多いに違いありません。





 本品は七歳の初聖体を記念した数少ない小聖画です。緑の牧草地に幼いイエズスと子羊が兄弟のように寄り添っています。幼いイエズスに抱きとめられる子羊は、初聖体を受ける子供の象徴です。ふたりの下には、幼い子供にも解かりやすい言葉遣いで、救い主の愛が記されています。

 Je t'aime... aime-moi!  ぼくはきみがすきだよ。きみもぼくをすきになってね。


 この聖画において幼いイエズスと子羊は牧草地にいます。西洋絵画の伝統に従えば、画面は上下二つに区切られて、上半分には空が、下半分には地面が描かれるはずです。しかしながらこの作品は、手前に描かれたわずかな草花を除き、背景がベタ塗りされています。また背景全体が緑色に塗られています。

 聖画の背景をベタ塗りしているのは、19世紀後半以来ヨーロッパに取り入れられた浮世絵の影響です。19世紀は「多色刷り石版」が発達した時代でもあり、この技法のおかげで開花したイマージュ・ピエーズ(images pieuses 小聖画)には、同時代にヨーロッパに流入した日本美術が強い影響を及ぼしています。

 背景の色が緑色であるのは、初聖体の聖画によく引用される聖句、「イエスは知恵が増し、背丈も伸び、神と人とに愛された」(「ルカによる福音書」 2章52節)の、いわば色による表現です。本品は幼い子供のための聖画であるゆえに、書かれている言葉も極力短く簡単で、聖句の引用はされていません。聖画を彩る緑色こそが、いわばこの聖句の代わりなのです。すなわちこの聖画が緑に塗られているのは、緑が生命力を象徴するからであり、初聖体を受ける子供が心身共に健やかに育ち、神と人とに愛されるようにとの願いが籠められているのです。


 表(おもて)面の最下部に、「ノートル=ダム・ド・ラ・ペのカルメル会」(Carmel Notre-Dame de la Paix)、図版番号 (601)、「シャロン=シュル=ソーヌ」(Châlon-sur-Saône)、「フランスで印刷」(Imprimé en France) の文字があります。

 「ノートル=ダム・ド・ラ・ペ」(Notre-Dame de la Paix) はフランス語で「平和の聖母」という意味です。この聖画を制作したカルメル会修道院はディジョンのカルメル会が作った修道院で、本品が刷られた 1956年の時点ではシャロン=シュル=ソーヌ(Châlon-sur-Saône ブルゴーニュ地域圏ソーヌ=エ=ロワール県)にありましたが、1971年に同じ県内の小村マジル (Mazille) に移り、現在に至ります。

 この小聖画と直接の関係はありませんが、マジルのカルメル会が使用している現修道院は 1968年から 1971年にかけて建設された現代建築で、カタロニア出身の建築家ホセ・ルイ・セルト José Luis Sert(ジュゼップ・リュイス・セール・イ・ロペス:Josep Lluís Sert i López, 1902 - 1983) による代表作の一つです。ホセ・ルイ・セルトはル・コルビュジエの弟子であり、ホセ・ルイ・セルトのカルメル会ノートル=ダム・ド・ラ・ペ修道院は、ル・コルビュジエのドミニコ会ラ・トゥーレット修道院 (le Couvent Sainte-Marie de La Tourette) に似ています。いずれも非常に有名な建物ですので、建築に関心がある方ならきっとご存知でしょう。





 聖画の裏面には「イエス様との初めての出会い」(Première Rencontre avec Jésus)、「フィリップ・ブランシャルドン」(Philippe Blanchardon)、「聖ジョゼフ学園」(Institution St-Joseph)、「1959年3月19日」(le 19 mars 1959) の文字が書かれています。


 下記の価格には、小聖画だけでなく、商品写真に写っている額、マット、ベルベット、工賃、税も含みます。商品写真に写っている額が在庫していない場合、同じ価格の他の額をご用意いたします。また商品写真とは異なるデザインや色の額をご希望の場合、同じ価格の他の額をご用意いたしますので、お気軽にご相談くださいませ。

 ベルベットの色は価格を変えずに変更できます。また価格が変わる可能性をお許しいただければ、どのような額でもご用意できます。





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