稀少品 アンティーク小聖画 「聖母被昇天」 パピエ・ヴェルジェに手彩色銅版グラヴュール


96 x 75 mm  フランス



 銅板による古い小聖画。フランス東部の町エピナル(Épinal グラン=テスト地域圏ヴォージュ県)で刷られたものと考えられます。




 版画による小聖画は、最初にパリで木版画刷られ始め、十七世紀には銅板、十九世紀には石版も行われるようになりました。アンシャン・レジーム期、すなわちフランス革命(1789年)よりも以前の時代、版画による小聖画は主にレンヌ、オルレアン、シャルトルで制作されていましたが、これらの拠点における小聖画制作はフランス革命によって終わりを告げました。

 エピナルのデッサン画家ジャン=シャルル・ペルラン(Jean-Charles Pellerin, 1756 - 1836)は、1800年頃からエピナルで小版画の大規模な印刷事業を始めます。ペルランの印刷所が生み出す小版画は、行商人によってフランス全土に運ばれて人気を博しました。本品もおそらくエピナルで刷られた作品と思われます。エピナルの小版画は世俗的な主題の作品が多いですが、本品のような聖画も含まれます。





 本品は中央の楕円内に聖画を描き、周囲を幅広の枠で囲みます。聖画の下にフランス語で「聖母被昇天」(l'Assomption de la Sante Vierge) と画題が書かれています。聖画、周囲の枠、画題とも銅版グラヴュール(エングレーヴィング)によるもので、手作業で彩色が施されています。聖母はバロック絵画風の天使ふたりに体を支えられ、ピンク色と黄金色に輝く雲に包まれて、天上へと引き上げられています。聖母の衣とマントの色は、古典的な赤と青に塗り分けられています。

 下の拡大写真に写っている定規のひと目盛は、一ミリメートルです。写真で見るとインタリオ(グラヴュール)はさほど細かく思えませんが、聖画の実物を肉眼で見ると、充分に美しい繊細さを有しています。





 帯状の四角い縁には、上部のピンクの部分に「薔薇」、下部の黄色い部分に「善悪を知る木の実」と「蛇」が刻まれています。「薔薇」は聖母の象徴です。「善悪を知る木の実」と「蛇」は、いずれも「創世記」三章に記録されている原罪の逸話に登場します。この聖画では、聖母の絵の下に「善悪を知る木の実」と「蛇」を描くことにより、聖母が原罪の支配を免れているという優位性を表しています。この思想は本品が刷られてからおよそ百年後の 1854年12月8日、聖母が受胎の瞬間から原罪を免れているという「無原罪の御宿り」の教義として、 教皇ピウス九世により正式に宣言されることになります。


 ルネサンスから十八世紀までにヨーロッパで作られた植物性の紙は、十九世紀以降の紙とは異なる手漉き紙で、紙料を漉(こ)すのに使う簀(すのこ)の跡が残っています。このような紙を、フランス語でパピエ・ヴェルジェ(仏 papier vergé)、英語でレイド・ペーパー(英 laid paper)と呼びます。この聖画は18世紀のものですので、パピエ・ヴェルジェに刷られています。





 簀の跡は、下の写真のように透過光で見ても良く分かります。




 さらに拡大すると、簀の跡以外にも、紙繊維の密度にムラがあることがよくわかります。これは古い時代の手漉き紙に見られる特徴です。




 本品はおよそ二百年前に刷られた古い品物ですが、非常に優れた保存状態で、特筆すべき問題は何もありません。美しいアンティーク品であるとともに、美術館や専門書の図版でしか普通は目にすることができないレベルの、たいへん稀少な作品です。





聖画の価格 24,800円 (税込、額装別) 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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