アンティーク小聖画 「神の子羊イエズス・キリスト」 詩篇40篇 7, 8節 105 x 70 mm


多色刷り石版に金彩

フランス  1905年



 多色刷り石版による聖画。幼子イエズス・キリストを正面から描き、十字架形と一体になった後光を金彩で描いています。下半分には、茶色のインクを使ったゴシック典礼体により、詩篇の聖句がフランス語で引用されています。

 Mon Père, Vous n'avez plus voulu d'holocauste. J'ai dit: Me voici! les Psaumes XXXIX. verset 10

 父よ。あなたはもはや全燔祭を欲し給いませんでした。わたしは申し上げました。「わたしはここにおります」と。(詩篇39篇10節)


 引用元として詩篇39篇10節が挙げられていますが、直接の引用元はアウグステイヌスの「詩篇註解」です。(註1) アウグスティヌスは「詩篇註解」のこの箇所において、神がもはや全燔祭(ぜんはんさい、ホロコースト holocauste)の生贄を欲し給わないのは、アグヌス・デイ(神の子羊)たるイエズス・キリストが完全な捧げ物となったからであるとしています。(註2)


 裏面は白紙です。裏面上部にフランス語で書かれた言葉から、この小聖画はシャルルという名前の男の子が、6歳の誕生日を迎えた妹マリィに贈ったものであることがわかります。文字はふたりの親による代筆です。

 本品は良質な中性紙に刷られています。折れ目はありますが、破れてはいません。特筆すべき汚れもありません。博物館に保管されていたわけでもない紙製品ですから、100年以上前の真正のアンティーク品としては十分に良好なコンディションといえます。


註1 アウグスティヌスの原文はいうまでもなくラテン語ですが、ここでは一般の人にもわかりやすく、モリゾ師によるフランス語訳で示されています。なおアウグスティヌスがここで引用している詩篇の聖句は、現行の聖書では40篇7節と8節にあたり、新共同訳では次のようになっています。

 あなたはいけにえも、穀物の供え物も望まず/焼き尽くす供え物も/罪の代償の供え物も求めず/ただ、わたしの耳を開いてくださいました。

 そこでわたしは申します。御覧ください、わたしは来ております。わたしのことは/巻物に記されております。


註2 「詩篇註解」のこの箇所で、アウグスティヌスはカインによるアベル殺害(創世記4章)を、ユダヤ人によるキリスト殺害の前表と解して、ユダヤ教徒とキリスト教徒の関係を論じています。すなわちアウグスティヌスによると、カインはアベルの血を吸った土地から追放されましたが、これと同じように、いわばキリストの血を吸った土地に喩えられる教会から、ユダヤ教徒は排除されます。もはや神に容れられない燔祭(はんさい)を行い続ける現代(すなわち5世紀)のユダヤ教徒は、徴を与えられたカインに比することができます。創世記の関連個所を示します。

 カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」
 カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。 (創世記4章8節から15節 新共同訳)






6,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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