極稀少品 愛の輝きのクロワ・ド・クゥ ピンク系ゴールドとストラスによる軽やかな花 フランスの伝統的意匠に基づく一点もの 36.7 x 23.0 mm 重量 2.0 g フランス 1930年代


全体の重量 2.05 g

突出部分を含む十字架本体のサイズ 縦 36.7 x 横 23.0 mm (上部に外付けした環を除く)


フランス  1930年代



 フランスの伝統的意匠に基づいて、十八金とストラスで制作されたクロワ・ド・クゥ。上部に外付けされた可動式の環も、十八金でできています。

 フランスにおける地域性豊かなキリスト教ジュエリーは十九世紀半ば以降次々に姿を消してゆき、現在では入手することが非常に難しくなっています。なかでも貴金属製の作品はベース・メタル製の作品に比べてわずかな数しか作られていないために、ほとんど手に入りません。とりわけ本品のような工芸品水準の宝飾品は、いくら探してもめったに見つかりません。





 本品はストラス(ラインストーン)を金の枠で囲んで小さな花を作り、七個の花を並べてラテン十字とした美しい作例です。ストラスは型で成形したものではなく、宝石と同様にきちんとしたカットが施されています。ストラスでダイヤモンドを模する場合、現代ではラウンド・ブリリアント・カットを施しますが、本品はおよそ八十年ないし九十年前に制作されたアンティーク品であるので、この時代に特有のシングル・カットとなっています。ストラスのパヴィリオン側(ガードルよりも下の面。枠にセットした時に裏側となる面)に張られていた箔は、歳月の経過によって剥がれています。





 ストラスはホワイト・ゴールドでベゼル・セット(覆輪留め)されています。ベゼル上端はミル打ちのように見える細かい細工によって円の内側へと折り曲げられ、ストラスのガードルを覆って石を留めています。上端を細かく折り曲げたベゼル(覆輪)は、正面から見ると小さな花のように、側面から見ると王冠のように見えます。




(上) Sandro Botticelli, "La nascita di Venere", 1483/85, tempera su tela, 172 x 278 cm, Galleria degli Uffizi, Firenze


 十字架交叉部のストラスは他のストーンよりも一回り大きく、淡いローズ(仏 rose 桃色)に色づいています。薔薇は愛を象徴します。後述するように、本品は金細工師がひとりの女性のために手作りしたものです。十字架交差部に嵌め込まれたローズ色のストラスは、秘められた愛の象徴です。


 


 ストラスを留めたホワイト・ゴールドのベゼルは、イエロー・ゴールドの花弁状装飾に囲まれています。それぞれの花弁状装飾はベゼルを高く持ち上げているため、透かし細工による軽やかな視覚的効果が強調され、たいへん繊細で華奢な意匠を実現しています。

 十九世紀前半のフランスでは、ビジュ・レジオノ(仏 bijoux régionaux 複数形)と総称される地域固有のジュエリーが富裕な地方で発達しました。十九世紀後半から二十世紀前半には、ビジュ・レジオノに見られるような地域固有の意匠が消滅する一方で、ビジュ・レジオノの流れを汲みつつ地方色を薄めた金製ジュエリーが、フランス全域で使用されるようになりました。




(上) プロヴァンスのクロワ・パピヨン(仏 croix papillon 蝶の十字)


 本品は特定の地方の意匠ではないので、ビジュ・レジオナル(仏 bijou régional 単数形)とは呼びにくいですが、いくつかの点でフランス製アンティークジュエリーに特有の意匠となっており、フランスの本土全域を広義のレジオン(région)とすれば、より広い意味での「ビジュ・レジオナル」ということができます。ラウンド・カットのストーンを並べてラテン十字とするのは、フランスのクロワ・ド・クゥ(仏 croix de cou 十字架型ペンダント)によくみられる意匠です。また縦木の下端と横木の両端に小球の装飾を取り付けるのも、フランス製クロワ・ド・クゥの特徴です。小さな花を多用する意匠はプロヴァンスのクロワ・パピヨン等と共通しています。





 本品の金属部分は十八カラット・イエロー・ゴールド(十八金)です。十八カラット・イエロー・ゴールドの色合いは生産国によって違いがあり、フランスのものは赤みが強い傾向にあります。本品の金も同様で、ピンク・ゴールドの隣に置くとイエロー・ゴールドに見えますが、わが国で作られた十八カラットの金合金(十八金)の隣に置くとピンク・ゴールドがかって見えます。

 本品の材質は金張りやピンチベックではなく、間違いなく十八カラット・イエロー・ゴールド(十八金)ですが、ポワンソン(仏 poinçon ホールマーク)は省かれています。商品として作られた金製品は、検質所に持ち込まれて刻印を受け、店頭に並べられます。しかるに本品は検質所の刻印がありません。これは本品が販売用商品として作られたのではないことを示しています。推測するに、本品はおそらく若き金細工師が、妻か恋人のために、一点のみを自ら手作りしたものでしょう。初めて本品を見たとき、筆者(広川)は小さな十字架が放つ清冽な輝きに心を奪われました。本品が放つ光は、グラン・メゾンの宝飾品には無い《愛の輝き》です。





 本品の制作年代は 1930年代と思われます。より具体的に言えば、1929年のウォール街に端を発した世界恐慌がフランスに到達する 1931年よりも少し前、あるいはフランス経済が不況から劇的に回復した 1938年から翌 1939年頃であるはずです。

 本品はおよそ八十年ないし九十年前に制作されたアンティーク品ですが、保存状態は極めて良好です。十八金は軟らかいので歪んだり潰れたりしている作例が多いですが、本品には歪んだり潰れたりした部分は一か所もありません。本品は日々愛用された品物であり、可動式の環の金に摩耗が見られましたが、この摩耗はきちんと修復されており、品物に対する愛情がうかがえます。ストラスの箔はほとんど取れていますが、これはアンティーク品には当たり前のことです。本品に限らず、すべてのアンティーク品のストラスは、経年によって剥がれています。


 本品は金無垢製品であるゆえに、表面が剥がれることは決して無く、永遠に美しい状態のまま末長くご愛用いただけます。商品の実物は写真で見るよりもずっと綺麗で、必ずご満足いただけます。





本体価格 63,000円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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