ストラス、ラインストーン、ペースト
strass, stras / rhinestones or pastes


 ストラスのクリップ式イアリング 当店の商品


 クリスタルガラス(鉛ガラス 註1)を宝石のようにカットし、パヴィリオン面(註2)に金属の箔を張り付けた模造石を、フランス語で「ストラス」(strass, stras)、ドイツ語で「シュトラス」(Strass, Stras)、英語で「ラインストーン」(rhinestone) または「ペースト」(paste)といいます。

 「ストラス」という名称は、この模造石を発明した宝石細工師ジョルジュ・フレデリック・ストラスの名前に由来します。英語の「ラインストーン」は、ジョルジュ・フレデリック・ストラスがアルザス出身であるために、本来ライン川で採集される水晶のジェム・グラヴェル(宝石質の礫)を指す名称「ピエール・デュ・ラン」(pierres du rhin フランス語で「ライン川の石」の意)が、この模造石を指す名称に転用されたものです。「ペースト」(paste)とはイタリア語の「パスタ」と同じく「練り物」を指し、「型による成形物」という意味で模造石に使われます。しかしながらガラスは宝石と同様にカットが可能であり、とりわけクリスタルガラスが美しくカットされて宝飾品や工芸品に使用されることはよく知られている通りです。


【ストラスの発明】

 「ストラス」の発明者ジョルジュ・フレデリック・ストラス (Georges Frédéric Strass, 1701 - 1773) はアルザスのストラスブール近郊に生まれた宝石職人です。ジョルジュ・フレデリック・ストラスは 1730年から自分の工房を持っていましたが、1734年に王室御用達の宝石細工師となりました。

 透明なクリスタルガラスの産業的生産に初めて成功したのは、イングランドのジョージ・レイヴンズクロフト (George Ravenscroft, 1632 - 1683) でした。ストラスはこのクリスタルガラスでダイヤモンドの模造石を作ることを考えつき、鉛の含有量を大幅に増やすとともに、鉛の精錬時に得られるビスマスとタリウムも加えて、酸化鉛等の含有量が50パーセントを超えるクリスタルガラスを作りました。このようにして得られたクリスタルガラスは屈折率がたいへん大きくてキラキラと光り、通常のガラスよりもカットが容易でした。ストラスはこのクリスタルガラスに金属の塩(えん)を加えて着色し、またパヴィリオン面に箔を張って輝きを強めました。


【「ビジュ・ド・ファンテジー」の流行】

 ジョルジュ・フレデリック・ストラスが作った模造石は、発明者の名前を取って、1746年からは単に「ストラス」と呼ばれるようになりました。1750年代以降は「ビジュ・ド・ファンテジー」(bijoux de fantaisie コスチューム・ジュエリー)が大流行し、パリでは天然宝石とストラスを混合して使用したジュエリーが制作されました。

 ルイ16世の妃マリー=アントワネット (Marie-Antoinette, 1755 - 1793) も多数のストラスやペルル・ド・ジャカンを、特にドレスに取り付けて愛用しました。1768年にルイ15世の息女たちの朗読係となり、その後マリー=アントワネットと親交を結んだマダム・カンパン (Jeanne Louise Henriette Genet Campan, 1752 - 1822) によると、マリー=アントワネットのチュイルリー宮の衣裳部屋には多数の「ビジュ・ド・ファンテジー」がありました。



註1 「鉛ガラス」の定義は時代や地域によって異なりますが、概ね 24パーセント以上の酸化鉛を含むガラス、と考えてよいでしょう。「鉛ガラス」のなかには、酸化鉛の含有率が 50パーセントを超えるものもあります。

註2 カット石のガードルより下側の面。石を枠にセットしたときに、裏側になる面。



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