20世紀半ばのフランスで制作されたクロワ・ド・クゥ。「クロワ・ド・クゥ」(croix de cou) とはフランス語で「首の十字架」という意味で、首に懸ける十字架形ペンダントを指します。「クロワ・ド・クゥ」は「キリスト教に基づく信心具」と「ジュエリー」の性格を併せ持つ品物です。
本品は十字架のラテン十字の各末端に丸い装飾を付けています。これは「クロワ・ド・ジャネット」(croix de Jeannette ジャネット十字)等、フランスで制作された「クロワ・ド・クゥ」に広く共通する特徴です。本品はクロワ・ド・ジャネットと同様、パリもしくはニオール(Niort ポワトゥー=シャラント地域圏ドゥー=セーヴル県)で作られたものでしょう。本品の意匠は特定の地方のものではありませんが、無色透明のストラスを多用している点ではノルマンディーの十字架に似ています。
本品の素材は、銀色の金属にストラスを貼り付けています。フランス語の「ストラス」(strass) はガラスでできた模造宝石のことで、英語の「ペイスト」(paste)、「ラインストーン」(Rhinestone) と同じです。スワロフスキー社のものをはじめ、現代のラウンド・カットのストラスはすべて「ブリリアント・カット」ですが、本品のストラスは古い時代の「シングル・カット」です。金属部分上部に刻印がありますが、貴金属検質所のホールマークではなく、金属の種類は不明です。マユショル(maillechort ジャーマン・シルバー、アルパカ・シルバー)かもしれません。
本品は数十年前のフランスで制作されたアンティーク品(ヴィンテージ品)ですが、古い物であるにもかかわらず、保存状態は良好です。ストラスはすべて揃っています。特筆すべき問題は何もありません。