真珠 その十 旧世界産淡水真珠
les perles ― 10. Perles de l'eau douce de l'Ancien Monde




 イシガイ科をネオ・ラテン語でウーニオーニダエ(羅 UNIONIDAE)といいます。この分類名は古典ラテン語ウーニオー(羅 UNIO, onis, n. m. 大粒の真珠)に由来します。すでに述べたようにイケチョウガイ、ヒレイケチョウガイ、カワシンジュガイ等、イシガイ科の淡水産二枚貝は美しい真珠層を有し、良質の真珠を作ります。これらの二枚貝は淡水真珠を目当てに養殖が行われています。

 海産の真珠は貝の種類ごとに大体の色が決まっています。これに対して淡水真珠はピース(外套膜片)を移植する場所を工夫すれば、白、クリーム色、ピンクは言うに及ばず、紫、茶、緑など、海産真珠に無い色の真珠を作り出すことが出来ます。また淡水真珠の照りは海産真珠にも増して美しく、ときに鏡面研磨した金属を思わせる光を放ちます。

 海産真珠にはまねができない多様な形状も、淡水真珠の大きな魅力です。上の写真は琵琶湖の無核養殖真珠です。十字型のものなど核が入っているように見えますが、ひとつひとつの十字が異なる形状であることからわかるように、実際は無核です。これらの形は移植するピース(外套膜片)の形状によって生み出されたものです。


【各種の淡水産真珠貝】

 全北区の各種淡水産真珠貝について、特徴を簡略に記述します。なおイシガイ及びカワシンジュガイの仲間は新北区(北アメリカ)にも広く分布しますが、新北区の淡水産真珠貝については別稿で扱っています。

・イケチョウガイ




 イケチョウガイ(Hyriopsis schlegelii)は元々琵琶湖淀川水系の二枚貝で、イシガイ目イシガイ科に属します。いずれもウグイスガイ目ウグイスガイ科に属するクロチョウガイ、シロチョウガイとは類縁関係が遠い(註1)ですが、美しい真珠を産するという実用上の共通点に基づいて、このような和名が付けられています。

 琵琶湖岸から陸側に少し入り込んだあたりに、内湖(ないこ)と呼ばれるいくつもの潟湖(せきこ)が存在します。内湖の水深は一メートルないし二メートルほどで、琵琶湖とつながっています。内湖は穏やかな環境であるゆえに魚の産卵地となっており、多くの稚魚をはじめとする特徴的な生物相を有します。琵琶湖産淡水真珠はこれら内湖で養殖され、最盛期であった 1970年代には年間六千数百キログラムが生産されました。近年では近江八幡市の西の湖(註2)、草津市の平湖、大津市の堅田内湖でイケチョウガイを使った真珠養殖が行われていますが、年間の生産量はおよそ二十ないし三十キログラムほどと多くありません。

 イケチョウガイによる真珠養殖が琵琶湖で成功したのは 1924年、商業的養殖が始まったのは 1928年です。当初は有核真珠でしたが、やがて無核の方が綺麗な真珠になることが分かったので、1946年からは無核真珠に切り替えられました。イケチョウガイは 1936年に琵琶湖から霞ヶ浦に移入され、当地においても淡水真珠が養殖されています。琵琶湖と霞ヶ浦には後述のヒレイケチョウガイが移入されており、イケチョウガイとの交雑が起こっています。なお淡水真珠業界ではイケチョウガイのことを「琵琶湖」と俗称しています。


・ヒレイケチョウガイ




 ヒレイケチョウガイ(Hyriopsis cumingii)は長江(揚子江)流域に生息する二枚貝です。湖南省の洞庭湖や江蘇省の太湖では、古来この貝から天然真珠が採れていました。洞庭湖は増水の無い通常期でも 2,820平方キロメートルの面積があります。琵琶湖の表面積は 669平方キロメートルですから、洞庭湖の広さは琵琶湖の 4.2倍に及びます。太湖は長江デルタに形成された湖で、2,250平方キロメートルの面積は琵琶湖の 3.4倍に相当します。

 中国産淡水真珠の養殖は、1980年代前半頃に始まりました。当初、中国産淡水養殖真珠はカラスガイを使っていましたが、表面が滑らかでないものが多く、市場での評価は高くありませんでした。しかしながら 1990年代以降は杭州を中心にヒレイケチョウガイが養殖され、高品質の淡水真珠が採取されるようになりました。

 日本でしか採れなかった時代の淡水真珠は高値で取引されたので、中国産淡水真珠も当初は高価でした。しかしながら淡水真珠養殖で財を成す者が出始めると、中国では多くの人々が淡水真珠養殖に参入し、大量の淡水真珠が市場に流入しました。過剰な量が供給された結果、淡水真珠の価格は暴落し、淡水真珠には「安物」のイメージが定着してしまいました。中国産淡水真珠は長期に亙って養殖され、その美しさは日本のあこや真珠に勝るとも劣らりません。真珠そのものの美とは無関係な要因により不当に低い評価が定着してしまったのは、まことに悲しむべきことです。

 先にべたように、ヒレイケチョウガイは霞ヶ浦と琵琶湖に移入されています。2010年の養殖真珠生産量は、あこや真珠が全世界で二十トン、オーストラリア産シロチョウ真珠が十トンであるのに対し、中国産淡水真珠は千五百トンを記録しており、いまや中国は真珠大国として不動の位置にあります。中国における淡水真珠の二大取引所は、江蘇省と浙江省にあります。


・カラスガイ

 カラスガイ(Cristaria plicata)はわが国最大の淡水産二枚貝で、本州各地に産します。北東アジア原産で、現在ではベトナムをはじめとする東南アジアに分布を広げています。貝殻の後背縁は後述のヌマガイよりも顕著な翼状に突出し、この部分に波状の褶紋(襞)を有します。カラスガイの種名プリカータ(羅 PLICATA)はラテン語の動詞プリコー(羅 PLICO 重ねる、畳む)の完了分詞で、後背縁の褶紋に由来します。

 琵琶湖には変異型メンカラスガイが分布し、淡水真珠養殖以前の時代から、天然真珠が得られることがありました。琵琶湖における養殖真珠の実験は 1910年頃に始まり、当初はメンカラスガイが用いられましたが、1924年に母貝をイケチョウガイに切り替えて、滑らかな真珠が採れるようになりました。なお中国では早くも十三世紀にカラスガイの養殖が行われ、護符となる仏像形の有核真珠が採取されていました。


・ヌマガイ(ドブガイ)




 ヌマガイ(Anodonta woodiana lauta)はドブガイとも呼ばれ、地方変異型がたいへん多い種です。一見したところカラスガイと似ていますが、後背縁の突出がカラスガイよりも小さいこと、またアノドンタという属名が示す通り殻頂に歯が無いことで区別できます。琵琶湖水系にはマルドブガイ(Anodonta calypigos)が産します。ヌマガイからは天然真珠が見つかることがあり、この貝を使った淡水真珠養殖も試みられています。


・カワシンジュガイ




 カワシンジュガイ(Margaritifera margaritifera)は冷たい水を好む淡水産真珠貝で、アイルランドを含むヨーロッパ北部からアジア北部にかけて広い範囲に分布します。イングランドではカワシンジュガイの真珠をスコッチ・パールと呼びますが、これはスコットランドに多く産するからです。わが国のカワシンジュガイは北海道、東北、山陰に分布します。

 カワシンジュガイは成長の速度が遅く、北海道大学の調査によると、殻長十三センチメートルに達するのに四十年ないし五十年を要します。カワシンジュガイの寿命は百年を超えるといわれています。成長がこのように成長が遅いので、カワシンジュガイをいったん採り尽くすと、個体数を速やかに回復することができません。カワシンジュガイから真珠を得たいのであれば、すでに生息している貝を手厚く保護する必要があります。またカワシンジュガイは寿命が非常に長いので、丁寧に扱えばひとつの貝から何度も真珠を得ることが出来ます。十九世紀後半までのヨーロッパではカワシンジュガイから真珠が採取されていましたが、貝を傷つけずに真珠を取り出すことが心がけられました。

 詳しい記録が残るエルベ川上流域の場合、流域は三百十三の区画に分けられ、毎年そのうち二十区画ないし三十区画について真珠採取が行われました。この割合で作業を進めれば、全三百十三区画を一巡するのに十年以上かかります。すなわち貝はおよそ十年に一度、開口器を用い殻を隙間程度に開けられ、天然真珠を含んでいるかどうかを調べられたのです。もしも天然真珠があれば、僅かに開いた殻の隙間から優しく取り出され、貝は再び川に戻されました。松月清郎氏「真珠の博物誌」によると、1720年から 1839年までの百二十年間に、エルベ川上流域の三十三区画から 四千二百八十九個の真珠が採取されています。一年あたりおよそ三十六個の割合です。


・ヨーロッパ産の各種淡水真珠貝

 ヨーロッパの淡水真珠はアイルランド、スコットランド、ドイツが最大の産地ですが、フランス、北欧諸国、ロシアなどにも淡水真珠が産出しました。ヨーロッパにおいて最も有力な淡水産真珠貝はカワシンジュガイ(Margaritifera margaritifera)ですが、これ以外にも数種の貝が淡水真珠を作りました。




 上の写真に写っている三種はラトビア南部メーメレ川(Mēmele)に産するイシガイ科の淡水真珠貝で、左から順にイシガイ属トゥミドゥス種(Unio tumidus)、イシガイ属クラッスス種(Unio crassus)、ドブガイ属キュグネア種(Anodonta cygnea)です。


【淡水産真珠貝の繁殖】

 イシガイ科の生活環にはグロキディウム幼生(glochidium)という段階があります。グロキディウム、正確にはグローキーディウムという名称は、古典ギリシア五グローキース(希 γλωχῑ́ς 矢の返り)に由来します。グロキディウム幼生は微小な二枚貝状の形状で、内側に多数の棘があり、虎挟みの様に閉じることで魚の鰓や鰭に固着します。

 イシガイ科の貝は雌雄異体であり、水温の上昇により繁殖期になると、雄貝は精子を放出します。環境中に放出された精子は餌となる微物とともに雌貝の入水管に取り込まれ、鰓上腔(英 uprabranchial cavity)で受精が行われます。受精卵は数か月のあいだ鰓上腔内に留まり、グロキディウム幼生となって出水管から放出されます。兵庫県に生息するドブガイ及びその近縁種がグロキディウム幼生を保有する時期は、五月から七月及び九月から二月と報告されています(註3)。

 魚は数百メートル以上の距離を容易に移動します。自力で移動することが不可能なイシガイにとって、魚に幼生を運んでもらうことは、生息域を拡大する理想的な方法となっています。グロキディウム幼生が魚に取り付く戦略は一通りではありません。母貝内で卵から孵化したグロキディウム幼生が母貝の出水管から吐き出され、プランクトンとして水中を漂いなから、ドジョウやヨシノボリをはじめとする様々な種類の魚の鰭(ひれ)や鰓(えら)、体表に取り付く場合もあります。タイリクバラタナゴのように貝に産卵する魚の場合、魚は貝に卵を守ってもらう、貝は付加した稚魚に幼生を運んでもらうという共生関係が成り立っています。イシガイ科の中には小さな無脊椎動物や稚魚にしか見えない疑似餌を作り、かかった魚にグロキディウム幼生を寄生させるものもいます。

 いずれの場合も、取りついたグロキディウムは魚の上皮細胞に被われたシスト(被嚢)を形成し、宿主から栄養を得て成長し、やがて稚貝になると宿主から離脱します。寄生したグロキディウム幼生の生存率は魚種による差が大きく、イシガイ科を繁殖させるには、適切な種類の魚を併せて保護する必要があります。


【無核淡水産真珠の養殖期間とサイズ】



(上) ヒレイケチョウガイのブリスター・パール 当店の商品です。


 本項で論じる養殖真珠とは、貝に対して外科手術を施すことにより得られる真珠のことです。既述のカワシンジュガイは、かつてドイツの川で生息環境を管理され、必要に応じて場所を移すなどの世話を受けていましたが、真珠自体は貝が人の手を借りずに偶然生み出す天然真珠であり、これを真珠養殖とは呼びません。

 淡水産養殖真珠は外套膜片のみを移植して作る無核真珠が主流です。すなわち一歳の貝から外套膜を採り、小さく切ってピース(英 a piece 移植片)とします。別の一歳貝の外套膜内にこのピースを移植すると、ピースは消失して真珠ができます。このようにしてできる無核の淡水真珠は、内部を含めた全体が真珠層で成り立ちます。

 それゆえ淡水産養殖真珠は、海産養殖真珠に比べて養殖期間が長いのが特徴です。海産養殖真珠は体積の九割が核で、真珠層の厚みは一ミリメートルもありません。それゆえ海産養殖真珠の養殖機関は短く、あこや真珠は一年ないし二年、状況によっては七か月で浜揚げされます。これに対して無核の淡水真珠をある程度の大きさまで育てるには、長い時間が必要です。養殖期間と無核淡水真珠の直径には、概ね次のような関係があります。

    養殖期間    無核淡水真珠の直径
     一年ないし二年    三ミリメートルまたはそれ以下
     二年ないし三年    三ないし五ミリメートル
     三年ないし五年    五ないし七ミリメートル
     五年ないし八年    七ミリメートル以上





(上) ネックレス用の淡水芥子真珠 当店の商品です。


 淡水産養殖真珠の圧倒的多数を生産する中国では、1990年代までは二冬三夏といって、春に養殖を始め、二年半後の秋に浜揚げするのが一般的でした。これでもあこや真珠より長い時間がかかっていますが、近年では養殖技術が進歩して、四冬五夏または五冬六夏、すなわち四年半ないし五年半にわたって養殖するのが標準になっています。これに伴って真珠の直径も大きくなり、二冬三夏の時代は四ミリ珠が主流でしたが、現在ではあこや真珠と同等のサイズである六ミリ以上の珠に生産の中心が移っています。

 かつての中国では真珠養殖にカラスガイが用いられました。しかしカラスガイが作る真珠は表面に細かい凹凸や皺ができやすい特性があります。わが国でも淡水真珠養殖の黎明期にはカラスガイを用いて研究が行われましたが、やがてイケチョウガイのほうが平滑で美しい真珠を得られることがわかりました。中国の淡水真珠母貝もカラスガイから切り替えられ、現在はヒレイケチョウガイが用いられています。

 真珠貝から得られる真珠の大きさは、貝の大きさに相関します。ヒレイケチョウガイの成長曲線は四歳半ぐらいまで急傾斜で、それ以降はなだらかになります。それゆえ現在の中国における真珠養殖では、ヒレイケチョウガイとその中の真珠を最初の四年半で大きく成長させ、次の一年間は別の池で真珠の光沢に深みを与える方法が採られています。なお真珠業界で池というのは淡水真珠貝を養殖する水域のことで、河川や大きな湖を含みます。


※ 無核淡水真珠を核に使ったセカンド・オペレーションについて



(上) セカンド・オペレーションによって得られた大きな無核淡水真珠。サイス 23.4 x 18.0 x 9.8 ミリメートル、重量 4.7グラム 当店の商品です。


 クロチョウ真珠及びシロチョウ真珠の場合と同様に、淡水真珠にもセカンド・オペレーションを施すことがあります。クロチョウ真珠とシロチョウ真珠の場合、セカンド・オペレーションの際に入れる核はおそらく貝殻製ですが、無核の淡水バロック真珠をいっそう大きく育てたいときは、ファースト・オペレーションのバロック真珠を採取した後の真珠袋に、元々入っていたものよりも少し大きな無核淡水真珠を挿入します。

 この場合、無核の淡水バロック真珠を核として使うことになりますが、セカンド・オペレーションで得られる大きな真珠は内部が全て真珠層であるゆえに、無核の淡水真珠であるといえます。セカンド・オペレーションの貝は真珠層を分泌形成する能力が弱っているので、こうして得られるクロチョウ真珠、シロチョウ真珠は直径が大きくても巻きが薄く、照りに劣りがちです。しかるに淡水真珠の場合、無核のバロック真珠を核として得られる大きな真珠は全体が真珠層ですから、巻きが薄いという問題は生じず、優れた照りの真珠が得られます。


【淡水産真珠の形状】

 淡水産真珠の形状は、無核の場合と有核の場合に分けて考える必要があります。

・無核淡水真珠の形状



(上) バロックの形状が美しい中国産無核淡水真珠。当店の商品です。


 海産養殖真珠の核はいわば真珠の骨格であり、真珠を球形に整える役割があります。しかるに無核の淡水産養殖真珠にはこの役割を果たすものがありませんから、真円すなわち完全な球形を実現することは極めて困難です。その一方で無核淡水真珠は、あこや養殖真珠とは比較にならない厚さの真珠層を有します。それゆえ無核淡水真珠のジュエリーは、母から娘へと何代にもわたって受け継ぐことが出来ます。

 無核真珠の最大の魅力は個性的なバロック・パールであると筆者(広川)は考えますが、球形の真珠を好む人もいます。無核淡水真珠が完全な球形に育つことは不可能ですので、淡水真珠業界では扁平率 4.5パーセント程度までの珠をラウンド、扁平率 8.5パーセント程度までの珠をニア・ラウンドまたはセミ・ラウンドと呼んでいます。球体をラウンドと呼ぶのに多少の違和感を感じますが、球の断面は円ですから、真球率を真円率に置き換えていると考えればよいでしょう。山中茉莉氏「淡水真珠」(ISBN4-89694-834-3)によると、無核淡水真珠のサイズとラウンド珠の出現頻度はおおよそ次の通りで、真珠が大きくなるにつれて球に近い珠が稀少になることがわかります。

     無核淡水真珠のサイズ    ラウンド珠の出現頻度
     三ないし五ミリメートル    十パーセント
     五ミリメートル台    五パーセント
     六ミリメートル台    三パーセント
     七ミリメートル台    一パーセント
     八ミリメートル以上    0.1 パーセント




(上) 長径 6ミリメートル、短径 5ミリメートルのポテト型淡水真珠。美しいピンクは無調色です。中国産。当店の商品。


 この表でわかるように球形の無核真珠を得ることは極めて稀ですが、ラウンドやニア・ラウンドとまではいかなくても、整った形の無核淡水真珠は、同じく無核である海産天然真珠に比べると、はるかによく採れます。これは淡水産二枚貝に外套膜片を移植する際、手術者の職人的技量によって形状がある程度コントロールされ得るからです。上下の写真の淡水真珠は形がよく整っていますが、無核真珠です。




(上) 中国産のライス型淡水真珠。美しいグラデーションは無調色です。長径 6.5 ~ 7ミリメートル 当店の商品。


 無核の淡水産養殖真珠にはラウンドやニア・ラウンド以外にも多様な形があり、無核真珠ならではの魅力となっています。よく見られる形には次のようなものがあります。

 ライス …… 幾分細長い回転体の真珠。最も多く生産される淡水真珠で、サイズ、色、形とも無限のバリエーションがあります。

 ドロップ …… しずく型の真珠。ペンダントやイヤリングに好適である他、球面側と尖端側を交互に並べて連組みした「クレオパトラ」と呼ばれるネックレスにも使われます。

 ボタン …… 背面が平坦なカボション状の真珠。平坦な面があるのは、真珠の片側が貝殻に押し付けられるように成長した名残です。ドイツ産カワシンジュガイの項で述べたカット真珠と同様、ジュエリーに安定的にセットできる形状です。

 ツイン …… 二個の真珠が融合して、雪だるまのようになった形。

 フェザー …… 北アメリカ産淡水真珠に多い、細長い板のような形。鳥の風切り羽を思わせることから、このように命名されています。一見したところ、スティックと呼ばれる有核真珠に似ています。


・有核淡水真珠の形状




 淡水真珠に核を入れる目的はふたつあって、うちひとつは形状を人為的にコントロールするためです。上述したように、中国では早くも十二世紀にカラスガイの養殖が行われ、仏像を模る鉛の核を用いて有核真珠が作られていました。この仏像真珠については、「文昌雑録」(1167年)の巻第一に記述されています。

 真珠貝に仏像真珠を作らせる中国の技術を応用して、カール・フォン・リンネ(Carolus Linnaeus, Carl von Linné, 1707 - 1778)はカワシンジュガイにブリスター・パール(英 a blister pear 貝殻に付着した瘤状の真珠)を作らせました。リンネは殻に付着しない真珠を作らせるのにも成功したと伝えられます。しかしながらリンネの真珠が量産に至ることはありませんでした。





 淡水真珠に核を入れるもう一つの目的は、大きな真珠を作るためです。上の写真は淡水の有核真珠で、いずれも当店の商品です。左の真珠の長径は 24.5ミリメートル、右の真珠の長径は 27.8ミリメートルで、二個を合わせると 12.1グラムの重量があります。無核真珠をこの大きさまで育てるには年数がかかりすぎるので、本品には球形の核を入れていますが、火焔のように華やかな形状と優れた照り、七色に輝く美しい色彩には、淡水真珠ならではの魅力が遺憾なく現れています


註1 全ての二枚貝は斧足綱に分類される。したがってイケチョウガイ、クロチョウガイ、シロチョウガイの三者は、斧足綱である点で共通している。しかしながら綱は門に次ぐ外延を有し、たとえばヒトの場合でいうと哺乳綱がこれに当たる。綱の下位分類が目である。イシガイ目のイケチョウガイとウグイスガイ目のクロチョウガイ、シロチョウガイは、譬えて言えばヒトとゾウ、ヒトとアリクイ、ヒトとツチブタの隔たりほど大きい。

註2 西の湖は最大の内湖で、ラムサール条約にも登録されている。

註3 福原修一、田部雅昭、近藤高貴、河村章人 「淡水二枚貝ドブガイに見られる遺伝的 2型の繁殖期」 貝類学雑誌 Venus 53(1) pp. 37 - 42 1994年 ISSN: 0042-3580



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