佐藤 恵美 メゾチント 「ブルー 青い目」 Emi Sato, "blue", 62 x 62 mm, mezzotint on paper


印画(版画の画面)のサイズ  縦 62 x 横 62 mm

サポート(版画を刷ってある紙)のおおよそのサイズ  縦 15 x 横 15 cm



 シャム猫を描いたメゾチント。モノトーンの画面を背景に、シャム猫特有の青い目が美しい光を湛えます。





 猫の場合も人間の場合も、いわゆる目の色とは瞳(瞳孔)の色ではなく、虹彩の色を指します。虹彩は瞳孔の周囲で伸縮して瞳孔の大きさ(開き加減)を変え、瞳孔から入る光量を調節します。猫は虹彩が大きいので、この部分の色が良く目立ってたいへん美しい目をしています。虹彩の最奥部、すなわち水晶体と接する部分はメラニンを多く含有し、濃褐色を呈します。しかしながら虹彩の前部、すなわち角膜に近い部分にはストロマ・イリディス(羅 stroma iridis 虹彩支質)という線維血管組織があり、この部分にある色素細胞の多寡によって虹彩の色彩が決まります。




(上) パート・ド・ヴェールによる汚れなき聖母のシャプレ 白百合の白と天上の金色を美しく取り合わせた作例 全長 50.5 cm フランス 十九世紀末から二十世紀初頭 オパランは反射光で見ると青みがかって見えます。当店の商品です。


 猫の虹彩は青から緑、黄色、赤褐色まで多様な色を呈します。シャム猫の虹彩は青く見えます。しかしながらシャム猫のストロマ・イリディス(虹彩支質)に青い色素があるわけではありません。

 シャム猫のストロマ・イリディスは、上の写真のオパラン(仏 opalin オパール・ガラス)に似ています。オパラン(オウパレスント・グラス)に青い色素は含まれませんが、反射光で見ると青みがかっています。シャム猫の目が青いのも、これと同様の現象です。

 ストロマ・イリディスは懸濁した体液のせいでトランスルーセント(半透明)ですが、実のところシャム猫のストロマ・イリディスにはメラニンがほとんど含まれません。シャム猫のストロマ・イリディスに白色光が入射すると、長波長の光はそのまま奥に進んで虹彩最奥部のメラニンに吸収されます。しかしながら短波長の光はティンダル現象で散乱し、再び目の外に向かいます。このような機序によって、シャム猫のストロマ・イリディスから反射される光は青みがかって見えるのです。





 虹彩の青色はレイリー散乱によるという説明も目にしますが、ストロマ・イリディスの体液を懸濁させている蛋白質や脂質は分子量が大きいので、レイリー散乱ではないでしょう。しかしながら色素による発色ではなく、モルフォ蝶のような構造色でもなく、宝石のような遷移元素による発色でもなく、その発色の機序はオパランの青に最もよく似ています。レイリー散乱に関しても、同一の現象とは言えないまでも、散乱による色という点で、近似した現象であるとは言えます。

 ロマネスク期の西ヨーロッパでは、色彩が地上と天上のいずれに属するかという問題について、激しい論争が行われました。虹彩の青は特定の物質に依存する「地上の色」ではありません。それゆえ筆者(広川)の見るところ、シャム猫の目が宿す無垢の青は、レイリー散乱による空の色にも似て、天上界を映しているように思えます。


 当店ではお客様のお好みに合わせまして、額の変更、マットの変更のご相談に応じます。

 写真に写っている額はインチサイズ(255 x 203 mm)です。ご注文いただいた時点で写真の額が在庫していない場合、同等クラスの他の額をご用意いたします。「ブルー 青い目」のサポート(用紙)全体のサイズは、余白を含めておよそ 15 x 15センチメートルです。用紙の余白を切除しても構わなければ、もっと小さな額も使用できます。





 上の写真に写っているマットには、若草色のベルベットを張っています。若草色のほか、ワイン・レッド、菫色がかったブルー、明るいベージュ、黒のベルベット張りマット、及びベルベットを貼らない白色マットまたはカラー・マットも、同価格にてご用意できます。この額を使用する場合、額、マット、工賃を含む額装済み本体価格は 16,800円です。





 マットの色を変更しても価格は変わりませんが、額の種類を変えると値段が変わる場合があります。上の写真の額はイタリア製の棹で制作しています。この額を使用した場合、額装済み本体価格は 19,300円となります。





電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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