ポール・セレスタン・グランドム作 「平和を望まば、戦争に備えよ」 身体の鍛練と予備教練のメダイユ


メダイユの直径 50.1 mm  厚さ 最大 6.0 mm  重量 64.4 g


1911年  フランス



 新進気鋭のメダイユ彫刻家ポール・セレスタン・グランドム(Paul Célestin Grandhomme, le fils, 1881 - 1978)が、フランス共和国戦争省の依頼によって制作したメダイユ。





 表(おもて)面には、フランス国旗をまとって大砲に腰掛けたマリアンヌ、すなわちフランス共和国と、軍装の少年が浮き彫りにされています。フランス共和国は国民国家であり、軍事への参加は主権者たる国民の大切な義務です。マリアンヌは少年の肩を抱く右手で国旗の一端を少年に掛け、少年をフランス国旗で包みこむことにより、彼がフランス共和国の一員であることを示しています。 マリアンヌは少年に語りかけつつ左腕を伸ばし、メダイユを囲む格言を指し示しています。格言はラテン語で、内容は次の通りです。

  SI VIS PACEM, PARA BELLUM.  平和を望むならば、戦争に備えよ。

 この有名な格言は、四世紀後半のローマの軍事学者プブリウス・フラーウィウス・ウェゲティウス・レナートゥス (Publius Flavius Vegetius Renatus) の著作、「デー・レー・ミリターリー」("DE RE MILITARI" 軍事論)、あるいは「エピトマ・レイー・ミリターリス」("Epitoma Rei Militaris" 軍事概論)の第三巻が出典とされています。「軍事論」のこの箇所に実際に書かれている言葉は、次の通りです。

  IGITUR QUI DESIDERAT PACEM PRAEPARET BELLUM.  それゆえ平和を欲する者は戦争に備えるべきである。

 マリアンヌがフリジア帽とともに被っているオリーヴの冠は、勝利と栄光、及び平和の象徴として知られていますが、このメダイユではオリーヴと大砲の組み合わせにより、軍事力に裏付けられた平和を表しています。





 マリアンヌと少年の足下、メダイユ最下部の中央には、「祖国のために」(PRO PATRIA) というラテン語が、アール・ヌーヴォー様式の字体で記されています。後方では戦旗がはためき、戦塵のなか戦いが繰り広げられています。メダイユの右下、縁に近いところには、ポール・グランドムのサイン (P. GRANDHOMME) が刻まれています。



 メダイユの裏面には、画面中央の銘板にフランス語で「戦争大臣賞」(PRIX du MINISTRE de la GUERRE) と書かれ、銘板の上部に飛行機、基部にライオンが浮き彫りにされています。「戦争省」(ministère de la Guerre) は1940年代まで使われていた省名で、現在のフランス国防省 (ministère de la Défense) にあたります。

 飛行機は1909年に初飛行したフランスの単葉機「ブレリオ12型」(Blériot XII) です。この時代のフランス機としては、1908年に開発されて翌年には英仏海峡を横断し、第一次世界大戦にも投入されたブレリオ11型が最も有名ですが、ブレリオ12型はこれをさらに改良したもので、当時のフランスが誇る最新鋭機です。

 ライオンは力、勇敢さ、高貴さの象徴です。また正義の象徴でもあるゆえに、ライオンの像はソロモンの玉座、フランス国王の玉座、西ヨーロッパ中世の司教座に刻まれていました。





 銘板の背景にはライフル射撃の銃と的、フェンシングの剣と手袋、砲丸、自転車、鐙(あぶみ)等、武術とスポーツを象徴する道具、及び軍楽を演奏するラッパや太鼓とともに、勝利と栄光、平和を象徴するオリーヴが浮き彫りにされ、これらの図像を取り囲むように、次の言葉がフランス語で記されています。

  entrainement physique, préparation militaire  身体の鍛練、予備教練

  force, courage  力、勇気

 フランスでは、革命期の1798年から1998年まで徴兵制が敷かれていました。フランス革命は「自由、平等、博愛」をモットーとしましたが、革命期のフランス人の皮膚感覚に「フランス国民の平等」を如実に感じ取らせたのは、国民皆兵の制度でした。革命以前の時代の軍隊は、貴族が指揮官となり、傭兵を戦わせるものでした。兵を雇うにはお金がかかりましたし、せっかく用意した兵も所詮は雇われ人です。しかしながらフランス共和国は兵を無償で徴募でき、徴募された兵は愛国心に燃えていました。近代フランスはすべての国民男性に兵役を課することにより、軍人として国を守る誇りを、全国民に共有させたのです。第一共和政が倒れても徴兵制は変わらず、ナポレオン一世のフランス軍は、貴族が傭兵を指揮する周辺諸国の軍を相手に、連戦連勝を誇りました。

 メダイユに刻まれた「予備教練」(préparation militaire) の文字は、兵役前の軍事訓練を意味します。表(おもて)面に刻まれた少年の誇らしげな表情に、祖国への奉仕を喜ぶ気持ちが表われています。

 メダイユの右下にメダユール(仏 médailleur メダイユ彫刻家)のサイン (P. GRANDHOMME) と制作の年号 (1911) が刻まれています。メダイユの縁には、ブロンズ製を示すパリ造幣局のホールマーク、コルヌ・コーピアエ(豊穣の角)と、「ブロンズ」(BRONZE) の文字が刻印されています。


 第一次世界大戦が迫る 1911年に制作された本品には、愛国心に燃える若きメダイユ彫刻家の意気込みが感じられ、クラシカルな優雅さとともに、力強い生命力が充溢する作品に仕上がっています。

 メダイユのコンディションは非常に良好で、百年以上前のものとはにわかに信じ難いほどです。表裏いずれの突出部分にも摩耗はほとんど無く、製作当時のままの状態である一方、真正のアンティーク品ならではの重厚なパティナ(古色)が、全体を均一に被っています。ご希望により、別料金にてメダイユを額装いたします。額装料金は使用する額によって異なります。





メダイユの価格 48,000円 (税込・額装別)

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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