スティール・エングレーヴィング 「サン・ドニ大修道院付属聖堂 聖母礼拝堂」

Lady Chapel, Abbey Church St. Denis


原画の作者 トーマス・アロム (Thomas Allom, 1804 - 1872)

版の作者 アレン (James Baylis Allen, 1803 - 1876)


画面サイズ 122 x 193 mm

イギリス  1860年代



 フランスのみならずヨーロッパ建築史上で最も大きな役割を果たした聖堂建築のひとつ、聖ドニ大修道院聖堂の内部を描いたエングレーヴィング。

 この修道院は初代パリ司教である殉教者聖ドニ(d. c. 250)の墓所で、メロヴィング朝以来フランクの王家と強い結びつきを持っていました。殉教者の聖地に新しい聖堂を起工したのは小ピピンで、775年に完成し、シャルルマーニュが献堂しています。

 しかしルイ7世の時代にはカロリング朝の聖堂はずいぶん手狭になり、ルイ7世の時代、1137年から1144年までの7年間という短期間で、大修道院長シュジェール(Suger, 1122-1151に在職)が古い聖堂を取り壊し、王権が強大化しようとする時代にふさわしい斬新で大規模な聖堂に改築しました。

 シュジェールはルイ7世が十字軍に出征していた間は摂政を務めたほどの政治的権力を持つ人物でした。彼は神が定めた王によるフランス国家統一を願い、各地方の世俗の領主や大修道院の力を殺ぐことに腐心しました。そしてカペー朝によるフランス統一のシンボルとしてまったく新しい建築様式による聖堂を建てたのです。

 新しい聖ドニ聖堂には尖頭アーチ、リブ・ヴォールト、外壁のバットレス、ステンドグラスの大きな窓というゴシック建築の要素がすべて揃っていました。さらに翼廊には北と南に薔薇窓があり、シャルトル司教座聖堂の薔薇窓の原型と言われています。薔薇窓を含め、この聖堂の大部分は後世に手が加えられてしまったのですが、オリジナルのまま残っている箇所もわずかながらあり、当時の面影を伝えています。


 パリのあるイール・ド・フランスはロマネスク文化圏の外にあります。ここで生まれたゴシック様式は、それゆえ、当時の人々に《フランス様式》と呼ばれました。ゴシック様式が北フランスで誕生したのは単なる偶然ではなく、歴史的な背景がありました。

 ロマネスク建築はクリュニー修道院長であった聖ユーグ(Hugues le Grand, 1024-1109)が建てた聖堂に始まります。彼は石造の立派な聖堂を民衆教化の有効な手段と考えました。またこの時代には技術が進歩して、石造の屋根をかけることが可能になっていました。このような事情があって、クリュニーに続いて立派なロマネスク聖堂が各地に建てられるようになりましたが、それらの聖堂はサンティアゴ・デ・コンポステラへの4本の巡礼路沿い及びローマに向かう巡礼路沿い、つまり南フランスに主に分布し、北フランスは建築の進歩から取り残されていました。

 ところがクリュニーの聖堂建築から数十年経って北フランスに豪華典礼主義が及んだときには、建築技術も相応の進歩を遂げていました。つまりオジーヴ穹窿の重量を壁体ではなく柱で支え、さらに外壁をバットレスで支えることによって、天井が高く壁が薄く開口部が大きい聖堂を建てることが技術的に可能になっていたのです。こうして聖堂建築の後進地域であった北フランスは一気に先進地域になったのでした。

 ロマネスク様式によって建設された多くの建物は修道院やその付属聖堂であり、あるいは巡礼のための建物であって、人里はなれた地にあることがしばしばでした。しかしフランス様式、つまりゴシックの聖堂は都市の中枢に位置し、全市民を収容できる大きさを備えていました。ロマネスクの聖堂のように修道士や巡礼者という限られた層の礼拝者だけを収容するのではなく、聖職者と都市市民が力を合わせて建設し、あらゆる層の市民がミサに与る場となったのがゴシック聖堂なのです。したがってゴシック聖堂は、まさにシュジェールが意図したとおり、貨幣経済の発展と都市の発達、封建制度の崩壊、王権によるフランス統一を象徴する建築物であるといえます。


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エングレーヴィングの価格 25,800円 (額装別)

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