スティール・エングレーヴィング 「パリ司教座聖堂 ノートル・ダム・ド・パリ」

Cathedral of Notre Dame, Paris


原画の作者 トーマス・アロム (Thomas Allom, 1804 - 1872)

版の作者 ル・キュ (John H. Le Keux, 1783 - 1846)


画面サイズ  縦 127 mm  横 191 mm

イギリス  1860年代



 ノートル・ダム・ド・パリは、聖堂の前庭にあるパリの中心地点の表示が象徴的に示すように、フランス史の中心舞台であり続けています。この聖堂がある位置は、パリがまだルテチアと呼ばれていたケルトの時代から神殿が置かれた聖なる場所でした。聖堂内陣の床下から発掘されたキリスト教以前の遺物は クリュニー美術館 に収蔵されています。現在の聖堂は1163年に起工され、1182年に内陣、1250年に身廊と塔、西側正面のファサードが完成しました。翼廊の工事が始まったのはこのころで、聖堂がようやく完成するのは14世紀半ば、着工から約200年後のことでした。

 版画に描かれた外観からも分かるように、この聖堂はスパン15mのフライング・バットレス(飛梁)を採用して壁面の割合を抑え、ステンドグラスの大きな窓を多用して、天空に向かって軽やかに上昇してゆく初期ゴシック建築です。内部は二重側廊を備えた五廊式で、建物の外郭を見る限りでは翼廊の張り出しはほとんどありません。

 この版画では見えていませんが、西側正面の扉口は3つに分かれていて、初期ゴシック(向かって右側の扉口)、古典的盛期ゴシック(向かって左側の扉口)、盛期ゴシック後半期(中央の扉口)の彫刻を見ることができます。

 ゴシック聖堂がしばしば200年以上もの歳月をかけて天を摩するかのように高く建造され、さらに力学的には大して意味のないリブ付きヴォールトによって、上昇してゆく線が強調されている理由、穹窿の巨大な圧力を支えるフライング・バットレスが聖堂内部からは見えないために高窓の層がガラスの壁のように見え、穹窿が軽やかに、あたかも宙に浮かんでいるかのように造られている理由、色とりどりの宝石のようなステンドグラスが聖堂内に天上の光を投げかけている理由、それはゴシック聖堂がヨハネの黙示録に記された神の都、新しいエルサレムを象徴しているからです。聖堂内部の高い穹窿は天そのものであり、ステンドグラスの光は聖ドニ聖堂を建設したシュジェールが言うように物質を霊化する神の光なのです。

 ロマネスク建築・ゴシック建築の大抵の聖堂は、天空から見るとラテン十字の形に建設されています。さらにノートルダム・ド・パリでは、十字架型プランの最上部にあたる東端の祭室の位置が身廊の中心線からわずかに北にずれており、十字架上で死んだキリストの首が右に傾いている様子を表すとも言われています。地上から見ても分からないこれらの特徴は、ヨーロッパ中世の聖堂がまさに神の栄光を表すための建造物であることを示しています。


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