リヨンにあるバシリカ、ノートル=ダム・ド・フルヴィエールの鐘楼上の聖母像、及び内陣の聖母子像を、細密浮き彫りで表現したメダイ。ブロンズの打刻による19世紀らしい作例です。
一方の面にはバシリカの鐘楼の頂上に立っている金色の聖母が表されています。伸ばした両腕を斜め下に広げた裸足の聖母は、無原罪の御宿りの姿です。聖母の足下にはリヨンの街並みが表され、次の言葉が周囲にフランス語で刻まれています。
Ils m'ont établie gardienne de leur ville. われ、リヨンの守護聖女と為されたり。
聖母はゆったりとした衣の上に、非常に大きく広がるマントを羽織っています。これは「ミゼリコルディア(憐れみ)の聖母」なるマリアがリヨンの人々を庇(かば)うためのマントです。
上の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。メダイの突出部分は幾分磨滅が見られますが、非常に細密な彫刻であることがおわかりいただけます。
もう片方の面にはバシリカ内部に安置されている聖母子像が表されています。聖母子は戴冠し、豪華な刺繍のある衣を着て、二人の天使に傅(かしず)かれています。聖母子の頭上では別の二人の天使が大きな冠を捧持しています。聖母に執り成しを求める祈りの言葉が、周囲にフランス語で刻まれています。
Notre-Dame de Fourvière, priez pour nous. フルヴィエールの聖母よ、我らのために祈りたまえ。
上の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。この面の彫刻は鐘楼上の聖母にも増して細密です。向かって右上の天使の顔はあまり磨滅せずに残っています。直径
0.5ミリメートルほどの横顔は目鼻立ちが整い、口許には微笑が浮かんでいます。
本品はおよそ百二十年前、1896年にノートル=ダム・ド・フルヴィエールが献堂された記念に制作されたメダイですが、保存状態は良好です。商品写真は実物の面積を数十倍ないし百数十倍に拡大しているので、突出部分の磨滅がよく判別できますが、実物を肉眼で見ると十分に美しく、その細密さに圧倒されます。