指先に載る小さなサイズに関わらず、優れた細密彫刻が施されたパリの聖母、ノートル=ダム・ド・パリのメダイ。
メダイの表(おもて)面には、パリ司教座聖堂に安置されているゴシック彫刻の聖母子像「ノートル=ダム・ド・パリ」(パリの聖母)を浮き彫りにしています。聖母は上半身をよじって幼子に向き合い、幼子イエズスは体全体を聖母に向けて、右手を母へと伸ばしています。イエズスは全宇宙の支配権を象徴する「世界球」(グロブス・クルーキゲル)を持っていますが、いまは慈母に抱かれる幼子として母に甘え、母子ともに睦み合っています。聖母子像の背景の雲は、天に上げられてキリストの右に座す聖母が、いまは地上の罪人のために執り成し手として日々働き給うことを表しています。
本品は直径 13ミリメートルに満たない小さな作品で、聖母の顔は直径 1ミリメートル以下、幼子イエズスの顔は直径 0.5ミリメートル以下という極小サイズですが、目鼻立ちは整って表情を読み取ることができ、メダイユ彫刻家の驚異的な技量がうかがえます。
もう一方の面には南西側からセーヌ越しに見たパリ司教座聖堂ノートル=ダムが浮き彫りにされています。タンパン(ティンパヌム)や薔薇窓のサイズは 1ミリメートルに満ちませんが、正しい比率で細部まで正確に再現されており、メダイユ彫刻家の人間離れした技量に圧倒されます。
本品は数十年前に制作された真正のヴィンテージ品ですが、保存状態は極めて良好です。磨滅箇所は無く、細部まで完全な状態で残っています。