数多くのロマネスク聖堂が残るオーヴェルニュにあって、最も美しい聖堂の一つ、オルシヴァルのノートル=ダム・ドルシヴァルのバシリカに安置される聖母のメダイ。ノートル=ダム・ドルシヴァルはクルミ材に銀をかぶせた木身像で、現在も崇敬を受けるこの種の聖母像としては、オーヴェルニュにおける唯一の例となっています。
メダイの表(おもて)面には、戴冠した栄光の聖母子像、ノートル=ダム・ドルシヴァルが肉厚の浮き彫りで表されています。聖母は幼子イエズスを膝に乗せ、本を開かせています。この像において幼子イエズスは知恵そのものであり、聖母は「知恵の座」として表されています。聖母子の周囲には、聖母に執り成しを求める祈りがフランス語で刻まれています。
Notre-Dame d'Orcival, priez pour nous. ノートル=ダム・ドルシヴァル(オルシヴァルの聖母)よ、われらのために祈りたまえ。
メダイの縁に近い部分に、19世紀末から 1930年代の初めにかけて数々の美しい作品を残したイタリアの彫刻家、O. リュフォニー (O. Ruffony)
のサインがあります。
もう片面には聖母を象徴する百合の花が浮き彫りにされ、その下に製造国を表す「フランス」(FRANCE) の文字があります。百合が聖母を象徴するのは、旧約聖書の恋の歌「雅歌」2:2の聖句によります。
Sicut lilium inter spinas, sic amica mea inter filias. (Nova Vulgata) おとめたちの中にいるわたしの恋人は 茨の中に咲きいでたゆりの花。
(新共同訳)
メダイの材質は、ブロンズに銀めっきを施してあります。90年ほども前の品物であるにもかかわらず、摩耗はほとんど見られず、たいへん良好なコンディションです。