数多くのロマネスク聖堂が残るオーヴェルニュにあって、最も美しい聖堂の一つ、オルシヴァルのノートル=ダム・ドルシヴァルのバシリカに安置される聖母のメダイ。ノートル=ダム・ドルシヴァル(オルシヴァルの聖母)はクルミ材に銀をかぶせた木身像で、現在も崇敬を受けるこの種の聖母像としては、オーヴェルニュにおける唯一の例となっています。
このメダイは20世紀中頃に制作されたもので、メダイユ上部の突出部分にはフランスの銀製品工房のマークが刻印されています。
メダイの表(おもて)面には、戴冠した栄光の聖母子像ノートル=ダム・ドルシヴァルを浮き彫りで表し、青色のガラスを掛けています。聖母の膝に乗る幼子イエズスは本を手にしています。この像において幼子イエズスは知恵そのものであり、聖母は「知恵の座」として表されています。
メダイの裏面にはノートル=ダム・ドルシヴァルを安置するバシリカを、南東から見た様子が浮き彫りにされています。聖堂の上部を囲むように、「ノートル=ダム・ドルシヴァルのバシリカ」(Basilique
de Notre-Dame d'Orcival) と書かれています。バシリカが建つ場所の地面の凹凸や、木々に覆われた背景が臨場感たっぷりに再現されていますが、聖堂の幅は5ミリメートルほどにすぎません。メダイユ彫刻家の芸術的才能と人間離れした技術には、ただ感嘆するしかありません。
本品は数十年前のフランスで制作された真正のヴィンテージ品ですが、古い年代にもかかわらず、たいへん良好な保存状態です。金属部分に関してもエマイユのガラスに関しても、特筆すべき問題は何もありません。