数多くのロマネスク聖堂が残るオーヴェルニュにあって、最も美しい聖堂の一つ、オルシヴァルのノートル=ダム・ドルシヴァルのバシリカに安置される聖母のメダイ。ノートル=ダム・ドルシヴァル(オルシヴァルの聖母)はクルミ材に銀をかぶせた木身像で、現在も崇敬を受けるこの種の聖母像としては、オーヴェルニュにおける唯一の例となっています。
このメダイは20世紀中頃に制作されたもので、精密なミニアチュール彫刻、青色ガラスによるエマイユ、メダイユを取り囲むビーズ状のデザインfが特徴です。
メダイの表(おもて)面には、戴冠した栄光の聖母子像ノートル=ダム・ドルシヴァルを浮き彫りで表し、青色のガラスを掛けています。聖母の膝に乗る幼子イエズスは本を手にしています。この像において幼子イエズスは知恵そのものであり、聖母は「知恵の座」として表されています。
中央の円形メダイの直径は 7ミリメートルで、これを囲む珠状装飾は直径 2ミリメートルです。珠状装飾はペルル・ド・ジャカンを連ねたものに似ています。ペルル・ド・ジャカンを連ねた装飾は、1920年代頃までのフランスでルリケールによく使われました。
上の写真は実物の面積を百倍に拡大しています。定規のひと目盛は 1ミリメートルです。浮き彫りにされた聖母子像の高さはおよそ 5ミリメートル、顔の直径はおよそ
0.5ミリメートルにすぎません。フランスのメダイユ彫刻家の芸術的才能と人間離れした技術には、ただ感嘆するしかありません。
本品は数十年前のフランスで制作された真正のヴィンテージ品ですが、古い年代にもかかわらず、たいへん良好な保存状態です。金属部分に関してもエマイユのガラスに関しても、特筆すべき問題は何もありません。