カタルニャ(カタロニア)の守護聖女、ヌエストラ=セニョラ・デ・モンセラート(モンセラートの聖母)の古いメダイ。19世紀後半に特徴的な形の銀の薄板に、浅浮き彫りの像を打刻しています。
一方の面にはモンセラートの岩山と修道院を背景に、戴冠した聖母子像ヌエストラ=セニョラ・デ・モンセラートを大きく表し、その前には跪いて祈る巡礼者たちを配しています。聖母の膝に抱かれた幼子イエズスは小さな冠を、聖母は後光と一体化した巨大な冠を、それぞれ頭上に戴いています。
ミル打ちを模した連続する点がこの図像を囲み、その周囲にはスペイン語で「ヌエストラ=セニョラ・デ・モンセラート」(Nuestra Señora
de Montserrat モンセラートの聖母)と書かれています。
もう一方の面には聖ベネディクトゥスの全身像が表され、ミル打ちを模した連続する点が聖人の図像を囲んでいます。その周囲にはスペイン語で「創立者なる聖ベネディクトゥス」(San Benito
Fundador) と刻まれています。
このメダイにおいて聖ベネディクトゥスが「創立者」(Fundador) と呼ばれているのは、ヌエストラ=セニョラ・デ・モンセラートを安置するサンタ・マリア・デ・モンセラート修道院が、ベネディクト会に属することによります。聖人は左手に聖ベネディクトゥスの戒律を持ち、十字架を持った右手を挙げて祝福の姿勢を取っています。棒状のものが聖人の足下に置かれていますが、これはベネディクト会士の強い団結を表す細い棒の束、あるいは修道院長の牧杖のいずれかです。聖人の右(向かって左)には、修道院長のミトラ(帽子)が置かれています。
聖人の左(向かって右)にあるものは、嘴にパンをくわえたカラス(烏)です。聖人を妬んだ敵が聖人の飲み物に毒を入れたのですが、聖人が十字を切ると、カップが粉々に砕けたと伝えられています。 また敵が聖人のパンに毒を入れたのですが、これをカラスが運び去ったといわれています。
ヌエストラ=セニョラ・デ・モンセラートは 1861年にはスペインの聖母像としてはじめて正式に戴冠しました。このメダイはヌエストラ=セニョラ・デ・モンセラートの戴冠後、あまり時間が経たない時代の巡礼記念の品で、聖品に使われる最高級の素材、銀を用いて製作されています。制作から百数十年が経過した真正のアンティークメダイですが、浅浮き彫りにもかかわらず図像の細部までよく残っており、たいへん良好なコンディションです。