スペインとスペイン系の諸国民の守護聖女、サラゴサのヌエストラ=セニョラ・デル・ピラル(柱の聖母)を浮き彫りにした円形メダイ。
メダイの中央にはサラゴサの聖母子像「ヌエストラ=セニョラ・デル・ピラル」(西 Nuestra Señora del Pilar 柱の聖母)を立体的な浮き彫りで表現しています。柱の聖母の下半身から柱頭にかけての部分は、ふだん円錐台形のマントに覆われていますが、このメダイでは全身が露出しています。
戴冠したレーギーナ・カエリー(羅 REGINA CAELI 天の元后)、聖母マリアは、幼子イエスを左腕に抱き、優しい眼差しを注いでいます。幼子イエスは左手にゴシキヒワを留まらせ、右手を伸ばして聖母のマントを引き寄せています。その様子はあたかも優しい母を悲しみから守ろうとしているかのように見えます。
(下) 聖母子像ヌエストラ=セニョラ・デル・ピラル。高さ 38センチメートルの木像。
聖母子像「ヌエストラ=セニョラ・デル・ピラル」は、「ラ・サンタ・コルムナ」(西 la Santa Columna 聖なる柱)の上に立っています。ラ・サンタ・コルムナはブロンズと銀でできたカバーで覆われたジャスパーの柱で、紀元40年に聖母が出現して以来、場所を変えていないといわれています。
(上・参考画像) ゴヤによるヌエストラ=セニョラ・デル・ピラル聖堂のフレスコ画(部分)
ラ・サンタ・コルムナにはギリシア十字が付いています。本品では円形の画面をバランスよく処理するため、聖母子像の両横を湧き上がる雲で満たしています。ラ・サンタ・コルムナのギリシア十字は、柱の上端近く、聖母子像から少し下の位置に移されています。
上の写真に写っている定規のひと目盛は、一ミリメートルです。聖母子の頭部は直径一ミリメートル以下のサイズですが、目鼻口がきちんと作られているばかりか、情愛を籠めて交わされる視線や、口許(くちもと)の微笑み、聖母の信仰と悲しみ、イエスの限りない愛が、見事に表現されています。聖母子の表情に比べると重要度が低いですが、衣の襞は自然に流れ、王冠のフィニアルもきちんと造形されています。スペイン語に「テクニカ・ソブレウマナ」(una
técnica sobrehumana 「超人的な技術」の意)という表現がありますが、本品を制作したメダイユ彫刻家の腕前は、まさに人間離れしています。
本品の制作年代は 1930年代から 50年代頃と思われます。何十年も前に作られた真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず、保存状態は良好です。直径は一円硬貨と同じくらいで、大きすぎず、小さすぎず、ペンダントとしてご愛用いただき易いサイズです。
上の写真は店主(男性)の手に載せて撮影しています。女性が実物をご覧になると、写真よりもひと回り大きなサイズに感じられます。