白と二色の青のエマイユ アール・デコ様式のメダイ 横顔の聖母 20.3 x 10.1 mm
突出部分を含むサイズ 縦 20.3 x 横 10.1 mm
フランス 1940年代
聖母の横顔を浮き彫りにしたアール・デコ様式のメダイ。1940年代に制作されたメダイですが、左右対称に配置した幾何学図形で表面を区切ったデザインは、まさにアール・デコ様式そのものです。
中央の大きな画面には、年若い少女マリアの横顔を浮き彫りにし、明るい青のエマイユを掛けています。空の色である青は天上を象徴するとともに、ブリュ・マリアル(仏
bleu marial)、マリアン・ブルー(英 Marian blue)と呼ばれて、聖母マリアを象徴する色ともされています。
マリアは眼を開いて、その視線はまっすぐに前を向いています。天使ガブリエルに受胎を告知された際、「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように」(ルカ
1:38)と答えて、将来の全てを神に委ねた少女の姿です。マリアの背景は、中心から放射するアール・デコ様式の光条で覆われています。優しい丸みを帯びた少女の顔と、直線的光条が放つ硬質の輝きの対比が、鮮やかな視覚的効果を生み出しています。
マリアの画面の下部は四つに区切られ、それぞれに波形の紋様を刻んだうえで、濃い青色の透明エマイユを施し、流水文としています。四つの流水文が表すのは、エデンの園から流れ出す四つの河、すなわちピション、ギホン、チグリス、ユーフラテスです。創世記2章10節から14節に、次の記述があります。
エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川はユーフラテスであった。(新共同訳) |
エデンの福楽はエヴァの犯した罪のせいで失われてしまいましたが、蛇の支配を受けない新しいエヴァ、無原罪の御宿りである聖母マリアは、救い主を産むことによって祝福の器となり、神とともにあるエデンの至福を再び人間にもたらす源、恵みの河の源となったのです。
メダイの両側には不透明の白いエマイユが掛けられています。白は聖母の衣の色、青は聖母のマントの色ですから、このメダイの配色では白と青の位置が入れ替わっていますが、少し離れてメダイを眺めると、自然に心に浮かぶのは、やはり聖母の姿です。
中世まで、マリアの図像は赤い衣と青いマントを身に着けて描かれることが多かったのですが、のちに青い衣に白いヴェール姿の図像で表されるようになりました。下の絵はいずれもスルバラン (Francisco de Zurbarán, 1598 - 1664) によるものですが、初期の作品における聖母は青と赤、晩年に描いた聖母は青と白の衣を着ています。
青と白の衣は、もともとポルトガルの聖女、ベアトリス・ダ・シルヴァ (Beatrix da Silva, 1424 - 1492) が幻視した聖母が身に着けていたものです。聖母の出現を受けて修道会創設を決意した聖ベアトリスは、1484年、トレドで女子修道会「無原罪の御宿り修道会」(La
Orden de la Inmaculada Concepción, ORDO IMMACULATAE CONCEPTIONIS, OIC)
を設けました。
本品は数十年前のものですが、破損やエマイユの剥落も無く、たいへん良いコンディションです。エマイユを施したメダイのなかでも、3色のガラスを使用したものは特に稀少で、たいへん美しい聖品に仕上がっています。
本体価格 11,800円 販売終了 SOLD
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