19世紀の最後の年である1900年の日付を彫り込んだ美麗なアンティーク・メダイ。フランスのもので、800シルバー製の高級品です。800シルバー製のものとしては比較的大型で、ある程度の厚みもあります。
表(おもて)面の中央には、両腕を広げて斜め下に降ろし、手のひらを前に向けた「無原罪の御宿り」の聖母が浮き彫りにされています。三重に造形された聖母の背景は、内側から順に、《すずらんの花を真下から見た形、あるいは六芒星の形》、《すずらんの形》、《正六角形》となっています。窪んだ部分を被いつくすように粒状のパターンが造形され、聖母の両脇には花あるいは植物文のエングレーヴィングが施されています。
5月の誕生花すずらんは、純潔と優しさの象徴、また戻ってきた幸福の象徴として知られ、その薬効ゆえに「天への梯子」という別名もあります。キリスト教文化圏においては、イエズスの受難のとき、聖母が十字架のもとに流した涙から咲き出たという伝承ゆえに、すずらんは「聖母の涙」(larmes
de Sainte Marie) とも呼ばれています。
上に掲げた2枚の写真をご覧ください。聖母の周囲に点在するごく小さな円は、聖母を囲む赤い円周上、あるいはすずらんの形をなぞる青い線上に配置されています。小さな円の数は、赤い円周上においても、青い線上においても、いずれも12個です。12個の小さな円あるいは星が聖母を囲む意匠は、「ヨハネの黙示録」12:1に基づきます。関連テキストを下に示します。
Et signum magnum apparuit in caelo: mulier amicta sole, et luna sub pedibus
eius, et super caput eius corona stellarum duodecim. ("Apocalypsis
Ioannis", XII: I)
「また、天に大きなしるしが現れた。一人の女が身に太陽をまとい、月を足の下にし、頭には十二の星の冠をかぶっていた。」(「ヨハネの黙示録」12:1 新共同訳)
12の星のデザインは、不思議のメダイとも共通しており、十二使徒すなわちキリスト教会の象徴であると考えられます。
【下・参考写真】 不思議のメダイの裏面。12個の星がマリアのモノグラムを囲むデザイン。当店の商品です。
メダイの裏面には下に示すイニシアルと日付の刻印があり、洗礼あるいは初聖体を受けた記念であろうと思われます。
M. C. M. 14, Juin, 1900 M. C. M. 1900年6月14日
800シルバーのメダイは、人生の大切な節目の記念にふさわしい高級品です。メダイ上部の環状部分、及びメダイに取り付けられた環のいずれにも、800シルバーのホールマークが刻印されています。
商品写真は実物を20倍近い面積に拡大していますから、突出部分の摩耗がよく目立ちますが、メダイを肉眼で見ると十分に美しく鑑賞できます。100年以上も前の真正のアンティーク品であることを考えれば、問題の無いコンディションです。