800シルバーで制作した透かし細工のメダイ。アール・ヌーヴォー期以前のものです。
表(おもて)面の中央には「無原罪の御宿り」の聖母が浮き彫りにされています。聖母は手のひらを前に向けた両腕を広げて斜め下に降ろし、その腕の中に抱くべく、罪びとを招いています。聖母の手からは恩寵の光が地上に降り注いでいます。
八輪の花綱が聖母の浮き彫りを取り囲んでいます。「八」という数字はキリスト教において新生あるいは再生の象徴であり、全身を水中に浸す洗礼が行われていた時代の洗礼堂は、八角形のプランで建てられていました。「八」はまた山上の垂訓(マタイによる福音書5章3節から10節)で説かれている八つの幸福の象徴でもあります。
花と花を結ぶ部分には、「ミル打ち」と呼ばれるアンティーク・ファイン・ジュエリーの職人技を模した細工が為され、ジュエリーのような華やぎとリズム感をメダイに与えています。
800シルバー(純度80%のシルバー)を示すフランスのホールマーク、及びフランスの銀製品工房のマークが、上部の環に刻印されています。シルバーのメダイは高級品で、初聖体をはじめとする重要な出来事を記念して購入され、記念の日付や名前を刻印して、身に着けられることが多くありました。このメダイもよほど大切にされたらしく、百年以上前に製作されたものであるにもかからわず新品同様の優れたコンディションです。聖母の顔や両手の指など、最も細かい部分までしっかりと丁寧に作り込んであります。