800シルバーを用い、19世紀のフランスで制作された透かし細工の高級なメダイ。
表(おもて)面の中央には、両腕を広げて斜め下に降ろした「無原罪の御宿り」の聖母が浮き彫りにされています。球体の上で蛇を踏み付ける聖母は、首を傾(かし)げて地上に視線を注ぎ、両手に嵌めた指輪から恩寵の光を注いでいます。
聖母の背景は布目のように細かいパターンで埋め尽くされています。ジュエリー制作において、平滑に磨き上げる「光沢仕上げ」は一見高級感がありますが、実はあまり手間がかからない方法です。空間を細かいパターンで埋め尽くすのは、光沢仕上げに比べてはるかに手間がかかります。それにもかかわらず、この小さなメダイが後者の方法を採用したのは、光を柔らかく反射することにより、たおやかな光に満たされた天上界を再現しているのです。
聖母の浮き彫りは突出部分に摩耗が見られますが、丸みを帯びた女性らしい体つきから衣の襞(ひだ)等の細部まで十分に残っています。商品写真は実物の面積をおよそ
90倍に拡大していますので、摩耗した部分が判別できますが、実物を肉眼で見るとたいへん美しい品物です。
メダイの周囲は軽やかな透かし細工となっており、柔らかな曲線が小さく可愛らしい珠と組み合わせられています。珠の直径は 0.5ミリメートルほどです。高級アンティーク・ジュエリーに見られる彫金技法「ミル打ち」を模した装飾が曲線部分に施され、ロザリオの珠のように見えます。
上部の環には 800シルバー(純度800/1000のシルバー)のホールマーク、及びフランスの銀製品工房のマークが刻印されていますが、磨滅して分かりにくくなっています。ブロンズ等と比べて高価な素材である銀は、通常はめっきとしてのみ使用されましたが、このメダイは美しい細工に掛かる手間と、素材に掛かるコストを惜しまずに制作した特別な品物であり、信心具のメダイとしては最も高級なクラスに属します。
写真では分かりませんが、本品はたいへん美しい小品です。聖母と薔薇が艶やかに輝く一方で、布目模様の背景が、あたかも聖母を包む神の愛のように、優しく柔らかい光を放っています。ご購入いただいた方には必ずご満足いただけます。