手彫りされた真摯な祈り 《聖オディル、我らの為に祈り給え 直径 13.5 mm》 細密彫刻の小さなメダイ フランス 1910 - 30年代
突出部分を除く直径 13.5 mm 厚さ 2.0 mm 重量 1.0 g
聖オディル(聖オッティーリエ、聖オディリア)はアルザス公を父に持つメロヴィング時代の聖女で、目が不自由な人の守護聖人、ならびにアルザスの守護聖人と考えられています。カトリック教会では12月14日、正教会では12月13日が祝日となっています。
本品は今からおよそ百年前にフランスで制作された聖オディルのメダイで、一方の面には聖オディルの定型的図像を、打刻による浮き彫りで表しています。
伝承によるとオディルはアルザス公の長子として生まれましたが、父が跡継ぎの男子を望んでいたのに女子であり、しかも生まれつき盲目であったせいで父に見捨てられ、十三歳までヴォージュ山中の修道院で育てられました。
その頃アイルランドの宣教師聖エルハルトがラインラント、すなわちフランスとドイツの間を流れるライン川流域を巡っていましたが、神から命じられて修道院に立ち寄り、少女に洗礼を授けました。その際エルハルトが少女の眼に聖油を付けると、少女は視覚を取り戻したと伝えられます。少女はそのときからオディル(仏
Odile)またはオディリア(羅 ODILIA)と呼ばれるようになりました。
聖オディルにゆかりの深いアルザス及びラインラントはフランスの東部とドイツの西部が接する国境地方であり、聖オディルは両国で篤く崇敬されています。聖女のフランス語名オディル(Odile)はオディロン(Odilon)の女性形です。
オディルはドイツでオディリアまたはオッティーリエと呼ばれます。オディルはフランク語の名前ですが、これを中世の書き言葉であるラテン語式綴りにすると、オディリア(ODILIA)となります。ドイツ語名オディリアはラテン語式のオディリアを、そのままドイツ語に取り入れています。一方オッティーリエ(Ottilie)はオットー(Otto)の女性形で、フランク語のままの形です。
オディル及びオッティーリエは先に述べた通りフランク語で、その語根オド(od-)またはオト(ot-)は、プロト=ゲルマン語アウダズ(再建形 *
audaz)に由来します。音楽が好きな方は、オディル(オディール)と聞くとロットバルトの娘を思い出されるでしょうが、オディルはオデット(Odette)の異形です。一言で言えば、女性名オディルとオデットは富と豊かさを表し、ひとつの同じ名前です。
聖オディルはアルザスの公女であったゆえに、豪奢なマントを羽織った姿で描かれることが多くあります。本品メダイの浮き彫りでも、聖オディルは縁に豪華な刺繍があるマントを羽織っています。しかしながら聖オディルの豪奢なマントはイコノグラフィーの決まりに基づくアトリビュート、すなわち人物の同定を容易にするための持物(じぶつ)であって、聖女が実際に贅沢な生活をしていたわけではありません。
聖オディルは公女であったにも関わらず、父に疎まれ、半ば遺棄される形で遠隔地の修道院に預けられました。父と和解した後も信仰に生き、父から譲られた城と財産のすべてを神と貧者に捧げました。それゆえ現実の聖女は豪奢なマントを着てはいませんでした。聖オディルの定型的図像に描かれる豪奢なマントは、富と豊かさを表す聖女の名とともに、神の摂理に信頼する聖女に与えられた高貴な美しさ、ソロモンの栄華に勝る野の百合の装い(マタイ 6:28、ルカ 12:27 野の花はいずれもクリナ κρίνα)を可視化したものであるといえます。
聖オディルが左手に持つ書物は、ベネディクト戒律の象徴です。
伝承によると、生まれつき盲目であったオディルは、洗礼の際に視力を回復しました。それにも関わらず図像における聖オディルは、しばしば視覚障碍者のような表情で描かれます。開いた両眼は聖女の顔ではなく、書物の上にあります。本品の浮き彫りでも、やはりそのような描写がなされています。修道院長聖オディルは視覚を回復しているはずなのに、聖女の表情は幼時と変わらず盲人のようであり、開いた両眼は聖女の顔ではなくベネディクト戒律の上に描かれる
―― この奇妙な描写は何を表しているのでしょうか。
ベネディクト戒律に浮き彫りにされた聖女の両眼は、洗礼によって視覚を取り戻した聖オディルが、神に捧げたその後の人生において、修道者の立場から全てを見、考えるようになったことを象徴的に表します。自身を神に捧げた聖オディルは自らの立場で物を見る眼を放棄して神のうちに生き、いわば全てを神のために見ることで、却って明敏な視力を手に入れたのです。開いた両眼が聖女の顔ではなくベネディクト戒律の上に描かれる図像は、そのことを表しています。
上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。オディルの顔は直径一ミリメートル強の円内に収まりますが、聖女の目鼻立ちは整い、盲人らしい表情も巧みに再現されています。
聖女に執り成しを求めるフランス語の祈りが、浮き彫りを取り囲んでいます。
Sainte Odile, priez pour nous. 聖オディルよ、我らのために祈りたまえ。
本品の祈りはメダイの制作時に打刻されたものではなく、後で彫り付けられています。硬い金属に一生懸命に彫られた文字に、祈りの真摯さが映し出されています。
メダイの裏面は左側に百合が造形されています。開花して馥郁たる香りを放つ三輪は、神が聖オディルに与え給うた百合の装いを表すとともに、本品メダイを身に着ける人を加護し給う三位一体の象(かたど)りでもあります。
上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりも一回り大きなサイズに感じられます。
本品は直径 13.5ミリメートルと小さなサイズで、どのような服装にも合わせることができます。ヨーロッパと全世界において、聖オディル崇敬は千三百年の歴史を有します。本品がおよそ百年の歳月をかけて獲得した美しいパティナ(古色)は、聖オディル崇敬の長い歴史に相応しい風格を感じさせます。
メダイをペンダントとして愛用すると、長い年月のうちに肌や服地と擦れ合って裏面が摩滅しますが、本品は裏面に百合しか彫られていないので、心置きなく愛用していただけます。百合が磨滅すれば、それは絶えざる神の加護が目に見える形となって現れたものに他なりません。
本体価格 11,000円
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。
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