一方の面に無原罪の御宿り、もう一方の面にアッシジの聖フランチェスコを浮き彫りにした大きなサイズのアンティーク・メダイ。
一方の面には、球体の上で蛇を踏み付ける無原罪の御宿りが、肉厚の浮き彫りで表されています。聖母は左脚に体重をかけたコントラポストの姿勢を取り、顔をわずかに左に向けています。大型のメダイとはいえ、八頭身の聖母の顔は高さ3ミリメートルほどしかありませんが、その顔立ちは美しく整っています。また衣の下に隠された優しく女性らしい体つき、胸のふくらみ、右の太ももの丸みも巧みに表現されています。キリスト教徒の優しい母、マリアの周囲には、執り成しを求めるラテン語の祈りが書かれています。
MARIA SINE LABE CONCEPTA, ORA PRO NOBIS AD TE CONFUGIENTIBUS. 罪無くして宿り給えるマリアよ。御身に逃るる我らがために祈りたまえ。
「無原罪の御宿り」(IMMACULATA CONCEPTIO) は、1854年12月8日、教皇ピウス9世により、教義として正式に宣言されました。このメダイはフランシスコ会がこの頃に制作したものです。「無原罪の御宿り」の神学理論を打ち立てるにあたって最も功績があった神学者ドゥンス・スコトゥス
(Duns Scotus, c. 1266 - 1308) は、フランシスコ会士でした。メダイ裏面に聖フランチェスコを配した異色の取り合わせに、「無原罪の御宿り」教義化に対するフランシスコ会の喜びが現れています。
もう一方の面にはクルシフィクス(キリスト磔刑像)を仰ぐ修道服姿の聖フランチェスコが、肉厚の浮き彫りで表されています。聖人はメメント・モリの象徴である頭蓋骨に左手を置き、右手を胸に当てています。メメント・モリ、正確にはメメントー・モリー (MEMENTO MORI) はラテン語で「死を忘れるな」という意味です。聖人は腰に荒縄を巻いており、手には聖痕の傷が見えます。聖フランチェスコの周囲には、心優しいこの聖人に執り成しを求めるラテン語の祈りが書かれています。
SANCTE FRANCISCE, ORA PRO NOBIS. 聖フランチェスコよ、我らのために祈り給え。
本品はブロンズまたは真鍮で制作された大型の作例�で、最大約 4ミリメートルの厚みがあり、手に取ると心地よい重みがあります。19世紀半ばの古いメダイですが、立体的な浮き彫りにもかかわらず磨耗はまったく見られず、鋳造時のままのすばらしいコンディションです。