二人のメダイユ彫刻家の共作によるアンティーク・メダイ。一方の面にはマルセイユの聖母子像ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド、もう一方の面には幼子イエズスを幻視するパドヴァの聖アントニウスを浮き彫りにしています。
一方の面にはマルセイユの守護の聖母、「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」を浮き彫りにしています。「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」はマルセイユの象徴、バジリク・ノートル=ダム=ド=ラ=ガルドの鐘楼頂上にそびえる聖母子の巨像で、「ラ・ボンヌ・メール」(優しい聖母さま)として市民に親しまれています。戴冠し、女王の威厳を備える聖母の顔立ちは美しく整い、いかにも幼子らしくふっくらとしたイエズスの体はたいへん愛らしく表現されています。聖母子の右下にはメダイユ彫刻家のモノグラムが彫られています。
近代思想が力を得て、カトリック教会が危機感を募らせた19世紀後半は、あたかも近代思想に立ち向かうかのような力強い聖母子の巨像が、フランス各地に建立された時代でした。ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドが祝別されたのは
1870年です。またル・ピュイ=アン=ヴレ(オーヴェルニュ)にある高さ16メートルの聖母像ノートル=ダム・ド・フランスの祝別は 1860年に行われました。美しく強い聖母は「ヨハネの黙示録」12章において竜と戦う女性であり、まさに「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」(守護の聖母)の名にふさわしい姿です。
もう片方の面には、祈祷の際に幼子イエズスを幻視するパドヴァの聖アントニウスを浮き彫りで表します。幼子イエズスは微笑んで聖人に手を伸ばし、聖人は幼子を愛しげに抱き寄せています。イエズスの幼子らしい体つきや、アントニウスの優しく端正な横顔のみならず、幼子をしっかりと抱擁する聖人の大きな手と、聖人の顔に触れる幼子の小さな手、二人が交わし合うまっすぐな視線に可視化された愛の通い合いを、浮き彫りによって見事に表現しています。
こちらの面の浮き彫りは、メダイユ彫刻家アンドレ・アンリ・ラヴリリエ (André Henri Lavrillier, 1885 - 1958)
の作品です。ラヴリリエは1933年から1952年まで発行されたフランス共和国の5フラン貨「ティプ・ラヴリリエ」(type Lavrillier)
をデザインした彫刻家としてもよく知られています。
ティプ・ラヴリリエ 1947年
本品はおよそ80年以上前にフランスで制作された真正のヴィンテージ品ですが、古い年代にもかかわらず、驚くほど良好な保存状態です。突出部分にもほとんど摩耗がみられず、聖母子とアントニウスの表情は細部まで完全な状態で残っています。