十九世紀末のフランスで制作されたパドヴァの聖アントニウスのメダイ。白色不透明ガラスを型押しして作られています。型からはみ出た部分は研磨により丁寧に除去されています。
フランシスコ会のメダイは一方の面に聖フランチェスコを、もう一歩yの面に聖アントニウスをあしらう作例が多いですが、本品はいずれの面も聖アントニウスとなっています。聖アントニウスはk投書を開いて祈っているときに幼子イエスを幻視したと伝えられ、この出来事に基づいて、幼子イエス・キリストを抱く姿で表されています。
本品には聖人名が刻まれていませんが、いずれの面も聖アントニウスであることが分かる定型化された像となっています。金属製メダイユに比べると、本品は浮き彫りが極めて立体性であり、メダイそのものにも八ミリメートル強の厚みがあって、優れた存在感を有します。ガラスは腐食しないうえに摩滅に強く、浮き彫りの突出部分もまったく摩滅していません。メダイ上部に通した金属製の環は、当店にて取り付けたものです。この環は容易に取り外せますので、よりクラシカルな細い革紐等に取り替えても良いでしょう。
上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真で見るよりもひと回り大きなサイズに感じられます。
白色不透明のガラスは十六世紀のイタリアで開発され、磁器の代用となりました。このガラス素材はフランスにおいては十九世紀末に特に人気がありました。本品もその頃に制作された品物です。メダイはほぼ全てが金属製で、稀に見つかるガラス製メダイも、紙の聖画を二枚のレンズに挟んだもの、あるいは金属製メダイに透明ガラスを掛けたものに限られます。メダイそのものがガラス製であるのは非常に珍しく、金属枠を用いない作例は当店でも本品以外に扱ったことがありません。
本品の保存状態は極めて良好です。特筆すべき瑕疵は何もありません。光を柔らかに反射する白色ガラスの艶は上品で、どのような服装にも良く似合います。ガラスは摩耗に強いので、いずれの面を表にしても心置きなくご愛用いただけます。本品は男女ともにお使いいただけます。