およそ百年前のフランスで制作されたスカプラリオのメダイ。大きめのサイズである上に、いずれの面にも立体的な浮き彫りが施され、たいへん重厚な趣(おもむき)があります。
メダイの一方の面には、イエズス・キリストの上半身を立体的な浮き彫りで大きく表しています。威風堂々としたキリストは、十字架のある後光を戴き、左手で衣の前を開いて、右手で愛に燃える聖心を指し示しています。十字架を突き立てられ、茨に巻きつかれて血を流すイエズスの聖心は、あまりにも激しい愛ゆえに、炎を噴き上げて燃えています。聖心から発出するまばゆい光は、神の愛と智恵、すなわち神そのものの象徴です。
もう一方の面には茶色のスカプラリオを授ける聖母子が浮き彫りにされています。カルメル山の聖母は、幼子イエズス・キリストを左膝に乗せています。イエズスが右膝ではなく左膝に乗っているのは、聖母が雲の上、すなわち天上にある栄光の聖母であって、「イエズスの右の座」に座しているからです。聖母は戴冠し、まばゆい恩寵の光に包まれています。
聖母子の顔立ちと表情はもちろんのこと、聖母子の衣服の自然な襞(ひだ)、フランスにおいて多くの聖母子像がまとっている刺繍入りの衣など、細部に至るまで心をこめて彫られた浮き彫り彫刻は素晴らしい出来栄えです。雲のように不定形で輪郭がはっきりとしないものを浮き彫りで表現するのは難しいですが、メダイユ彫刻家はこの難事にも見事に成功しています。
本品はおよそ80年前にフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、保存状態はきわめて良好です。特筆すべき問題は何もありません。手に取ると心地よい重みを感じる立派なサイズのメダイです。