およそ百年前のフランスで制作されたスカプラリオのメダイ。いずれの面にも非常に精緻な浮き彫りが施され、美しい古色に被われています。
メダイの一方の面には、イエズス・キリストの上半身を立体的な浮き彫りで大きく表しています。十字架のある後光を戴いたキリストは、右手を挙げて祝福のポーズを取り、左手で愛に燃える聖心を指し示しています。十字架を突き立てられ、茨に巻きつかれて血を流すイエズスの聖心は、あまりにも激しい愛ゆえに、炎を噴き上げて燃えています。聖心から発出するまばゆい光は、神の愛と智恵、すなわち神そのものの象徴です。神の光は聖心のみならずイエズスの全身から発出して、空間を満たし、祝福を受ける者を至高の愛で包み込みます。
もう一方の面には聖サイモン・ストック (St. Simon Stock, c. 1165 - 1265) に肩布と茶色のスカプラリオを与える聖母子が浮き彫りにされています。カルメル山の聖母は幼子イエズス・キリストを膝に乗せ、雲に乗ってカルメル会士サイモン・ストックに出現しています。聖母は肩布、幼子イエズスは茶色のスカプラリオを、聖人に与えようとしています。修道服姿の聖人は、修道院の床に跪き、聖母子のほうに両腕を差し伸べています。聖人の背後には、台に置かれた祈祷書が見えています。この群像を囲むように、ラテン語で「ウィルゴー・カルメリー」(VIRGO
CARMELI 「カルメルの聖母」)と記されています。
本品は80年ないし 90年ほど前にフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、保存状態はきわめて良好です。特筆すべき問題は何もありません。メダイ全体を覆う古色のせいで、暗色を背景に浮き彫りの突出部分が輝く劇的効果が生まれています。