一方の面には聖心を示すイエズス、もう一方の面にはカタルニャ(カタロニア)の守護聖女、ヌエストラ=セニョラ・デ・モンセラート(モンセラートの聖母)を、いずれも肉厚の浮き彫りで表した銀製メダイ。
一方の面に浮き彫りにされたイエズスは、釘の孔が開いた両手で衣を開き、聖心を示しています。聖心は茨の冠に取り巻かれ、上部に十字架を突き立てられています。イエズスの聖心はあまりにも強い愛ゆえに強烈な光輝を発し、愛の炎を噴き上げて燃えています。
もう一方の面にはヌエストラ=セニョラ・デ・モンセラート(モンセラートの聖母)の横顔を、肉厚の浮き彫りによって大きく再現しています。ヨーロッパに広く分布する「黒い聖母」は神秘的で、ときには恐ろしげに見える聖母さえありますが、「ラ・モレネタ」または「ラ・モレニタ」(La
Moreneta/Morenita 黒い乙女)の愛称で呼ばれるモンセラートの聖母は優しい微笑みを浮かべた穏やかな顔立ちです。
イエズス像の彫られた面には、スペインの銀製品工房による六角形の刻印、及び 750シルバー(純度 750/1000の銀)を示す流星のホールマークがあります。流星のホールマークは
1934年以降のスペインにおいて使用されています。
流星の反対側には六角形の枠に囲まれたセタ(Z)と数字(51)の刻印があります。六角形の枠に囲まれたアルファベットは制作地の表示で、セタ(Z)はサラゴサ(Zaragoza)を意味します。数字は銀製品工房に割り当てられた番号です。
本品は1930年代後半から1940年代頃のスペインで制作されたメダイですが、古い品物にもかかわらず、突出部分の磨滅はごく軽微で、図像の細部までよく残っています。特筆すべき瑕疵(かし 欠点)は何も無く、たいへん良好なコンディションです。ところどころ硫化して黒ずんだ銀が、真正のヴィンテージ品ならではの趣を醸(かも)しています。銀をきれいにしたい場合は、ブラシに練り歯磨きを付けて軽くこすれば簡単にクリーニングできます。