フランス語で「クロワ・ソヴガルド・デュ・サン・タンファン・ジェジュ・ド・プラーグ」(croix sauvegarde du Saint Enfant
Jesus de Prague)、すなわち「プラハの聖なる幼子イエズスの十字架型護符」と呼ばれる十字架形メダイ。この「クロワ・ソヴガルド」(十字架形護符)は各国語のものが同一の意匠で作られていますが、本品はフランス語とオランダ語によります。ラテン語の部分は各国語の「クロワ・ソヴガルド」に共通します。
通常、「ソヴガルド」(sauvegarde フランス語で「護符」の意)という名称は、マルグリット=マリが啓示された布製信心具を指しますが、本品は19世紀末頃に考案された別のソヴガルドで、ピウス10世 (Pius X, 1835 - 1903 - 1914) による免償を受けています。
一方の面には「プラハの幼子イエズス」が中心に浮き彫りにされ、その周囲にフランス語で次の言葉が記されています。
Saint Enfant Jésus, benissez-nous. 聖なる幼子イエズスよ、われらを祝福したまえ。
周囲の突出部分には次の言葉がラテン語で記されています。
Et Verbum caro factum est そして言葉は肉となった。
V.R.S. (VADE RETRO SATANAS.) 悪魔よ、退け。
「言葉は肉となった」は、ヨハネによる福音書1章14節の言葉です。「悪魔よ、退け」は、イエズスが福音書において病者を癒す際の言葉で、司祭が悪魔祓いを行うときに使われます。
上の写真は実物の面積を約60倍に拡大しています。写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。幼子イエズスの顔は直径 1ミリメートルという極小サイズですが、整った顔立ちに穏やかな表情を浮かべています。祝福する形に挙げられた小さな右手、衣の襞と模様、左手に載せられたグロブス・クルーキゲルも、拡大写真ではっきりと判別できます。
「グロブス・クルーキゲル」(GLOBUS CRUCIGER 世界球)はラテン語で「十字架の付いた球体」という意味で、全宇宙に対する支配権の象徴です。幼子イエズスがこれを持っている図像は、イエズスが全知全能の神、三位一体の第二のペルソナ(位格)、全宇宙の創造主にして支配者であることを示します。
もう一方の面にはイエズスを表すギリシア語のモノグラム、イオタ・エータ・シグマ (IHS) の周囲に、オランダ語で次の言葉が記されています。
Goddelijk Kindje Jesus, zegen ons. 神なる幼子イエズスよ、我らに祝福を与えたまえ。
周囲の突出部分には次の言葉がラテン語で記されています。
REX SUM EGO. 我は王なり。
VIVAT JESUS. イエズスの生き給わんことを。
A. R. T. (ADVENIAT REGNUM TUUM.) 主の御国の来たらんことを。
AVE MARIA. アヴェ、マリア。
「主の御国の来たらんことを」は、マタイ伝6章およびルカ伝11章にある主の祈りの言葉です。「イエズスの生き給わんことを」は、フランソワ・ド・サール(フランシスコ・サレジオ St. Francois de Sale, 1567 - 1622)の言葉です。